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米国がん学会(AACR)2010から -その1-
02
May
4月17-21日にワシントンDCで米国がん学会(AACR)2010が開催されました。昨年よりも今年は、がん免疫関係の教育講演が5日間毎日あり充実していました。
教育講演といっても、学会のプログラム委員会により選別された世界のトップ研究者による最先端の話題提供が含まれますので、現時点のがん免疫療法の全体像を把握できる非常によいチャンスになります。
今回の全体の印象としては、新治療法開発や既存治療法の一つ一つの効果を検証するという段階は過ぎ(要するに、マウスで効いてもヒトでは役に立たない、というもの)、使える手段は全部組み合わせて使うべきだ、という段階に進んでいます。
あれほど期待されていたペプチドワクチンも樹状細胞療法も、それぞれ単一療法では効果不十分だ、と演者に壇上から宣告されてしまう状態でした。
がん免疫療法関係のポスター発表も減少していましが、これは、アイスランドの火山爆発の影響でヨーロッパから大量のキャンセルが発生したためだけではないと思われます。
おそらく来年以降は、基礎的なメカニズム研究に合わせて、ヒト臨床効果までもきちん示してみせないと、がん免疫療法の研究成果として認められないだろうと思われます。
その中で、第1日目に目立った話題の一つは、
"MDSC"(ミエロイド由来免疫抑制細胞)
についてです。
代表的なセッションは、
"Myeloid-Derived Suppressor Cells: A Major Obstacle to Cancer Immunotherapy"(MDSC:がん免疫療法の主な障害)
でした。
その中でも目立ったものを一つ上げますとSuzanne Ostrand-Rosenbergの講演があります。
MDSCは、正常状態ではマクロファージ、樹状細胞、顆粒球という免疫反応にとっては必要な細胞群に分化していきますが、担がん状態では、この分化が阻害され、MDSCが溜まるといいます。
MDSCの働きは、ナチュラルキラー細胞を阻害する、抑制性T細胞を増やす、NOガスを作るなど、がん細胞を攻撃するT細胞を妨害する悪い作用だらけです。
MDSCは体内で炎症を起こしている組織に多いことから、ここで提唱された仮説は、
"慢性炎症は、MDSCの活性化を通じて、がんを悪化させている"
というもので、その対策として、抗炎症剤(非ステロイド性のもの) を投与すればよいと主張していました。非ステロイド性抗炎症剤には、誰もがよく知っているアスピリン(スーパーでも売っている解熱剤・頭痛薬です)も含まれます。
その他にも、MDSCによるT細胞の阻害作用を提示し、MDSCではどれが主役のメカニズムとして作用しているのか、混沌とした状態になっていました。今後、MDSCの作用を抑えてがん治療につなげるにはどうすべきか論争が展開されるかもしれません。
もう一つ、気になった講演がありました。Ivan B. Borello(ジョンズホプキンス大)で、MDSCでは、(1)一酸化窒素(NO)と酸素ラジカル(O2-)から別のラジカル(ONOO-)ができ、これがT細胞を阻害するとのことでした。
しかも、(2)細胞内のcGMPという分子をGMPという分子に転換する酵素PDE5の阻害剤(sildenafil)はT細胞を増殖させる、白血病の1種ミエローマでは、白血病細胞増殖を抑える臨床効果が確認できた、と発表していました。
一見関係なさそうに見える上記(1)(2)の話は、この演者の論文(J Exp Med. 203:2691-2702, 2006)から関連性が推定できます。そこには、「特にsildenafilは、アルギナーゼ-1とNO合成酵素-2を減弱させる」と書いてあるのです。
リンパ球の増殖には必須アミノ酸であるアルギニンが必要です。それを分解するアルギナーゼ-1が少なくなれば、T細胞は活性化します。そしてNO合成酵素-2が少なくなれば、一酸化窒素(NO)が少なくなり、T細胞は結果的に活性化します。これが抗がん作用につながるというわけです。
Sildenafilの商品名はバイアグラです。がん患者様は「免疫バイアグラ」を喜ぶでしょうか?











