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アメリカ癌学会のトレンド

23

May

 今年4月14日より18日まで、アメリカ癌学会(AACR 2007)がロサンゼルスで開催されました。筆者は主にがん免疫関係の演題を聴講しましたが、 以下はその全体のトレンド報告です。

 がん組織における免疫反応の抑制作用のメカニズム解析が急速に進んでおり、免疫抑制をする細胞の活動を、逆にいかに抑制するかがの話題の中 心となっていました。

 その出発点となるのは、がん局所に免疫反応を抑制する細胞の集積が見られ、それががん免疫反応の邪魔になっているのが、もはや疑いのない事 実として認識されてきたためです。

 例えば、卵巣がん症例の腹水中のT細胞を増殖培養すると、確かに、その中の抑制性T細胞(Treg)の割合が増えていることが統計学的有意差を もって明瞭に指摘されていました。すなわち、うかつに「培養リンパ球を用いた免疫細胞療法をおこなうと、かえって良くない結果をもたらす」可能性が高いことを示唆しています。

 また、がん局所での免疫抑制反応が単にTregによるものだけではなく、一つの細胞が複数のシグナルを他の細胞に出しており、その中にはキラーリンパ球(CTL)を刺激する方向と抑制する方向の2種類が同時にあり、それらのバランスが非常に複雑な系で制御されている話題がいくつも出ていました。

 がんの局所ではキラーリンパ球群、抑制系リンパ球群、免疫反応促進系 /抑制系の単球系細胞群が入り乱れ、全体としてオーケストラを奏でるように、がん免疫反応が起こっているようです。

 また、がんワクチン関係の演題がポスター発表でもシンポジウムでも急に増えています。特に昨年に比べて臨床で有効だという報告が多く、マウス実験レベルの報告は相対的に減少していました。すでに様々なタイプのがんワクチンがPhase I/IIの臨床試験に入っています。

 ペプチドワクチンでは、1種類のペプチドをテストする時代はもはや過ぎ、4種類を混合して適用しておりました。来年からはさらに進んだPhase II/IIIの臨床試験の発表が増えるだろうと思われます。

 さらに、ワクチンを抗がん剤・放射線などの治療法と同時併用する研究も複数あり、ほとんどが大型残存がん治療ではなく、術後再発抑制、転移抑制を狙っていました。臨床の経験を積み、免疫療法にも限界があることに皆が気がついた証拠だろうと思います。

 典型的なのは、がん免疫療法のシンポジウムの座長が、「がんの殺し屋細胞を増やせ、それができなければがん細胞を減らせ」と言っていたことに現れています。がん細胞を減らすには、たとえ完全にがん細胞を殺しつくせなくても、手術・放射線・抗がん剤がまだまだ効果的で、これらといかにうまく組み合わせて治療していくかが、今後の大きな課題として浮上してきたのです。