よくあるご質問と回答

専門的な質問

31 多くの抗原は長期間ホルマリンに保存することによって変性するといわれています。がん組織を長期間ホルマリンに保存することによって、がん抗原が変性することはないのでしょうか。

 ご心配には及びません。細胞性免疫反応におけるがん抗原の本体は、がん抗原タンパクの中のペプチドで、アミノ酸残基数で9-15個です。そのアミノ酸残基のなかでホルマリンと反応する官能基がないペプチドの場合は、長期間ホルマリン漬けにしても安定です。大部分は壊れずに残ります。

 このようなペプチドが抗原提示細胞の中でうまく処理され細胞表面に「異常目印」として提示されれば、十分がん抗原として働きます。実際、我々の研究でがん抗原タンパク(CEAを使いました)を取り込ませた抗原提示細胞をホルマリンで化学固定した場合でも、CEA産生がん細胞だけを特異的に殺す細胞傷害性キラーリンパ球(CTL)を誘導できるという実験結果が得られています。

 ホルマリン漬けの組織の保存は数年なら冷蔵庫でかまいません。それ以上となる場合は、ホルマリン漬け組織をそのままフリーザー保存してください。ホルマリンによる化学反応の進行がかなり止まります。

 ただし、がん抗原タンパクを抗体染色する場合は、がん抗原タンパクがホルマリン固定されるときに立体構造が変化し、抗体が結合しなくなることがあります。抗原抗体反応とCTL誘導反応とは、同じ免疫反応の中でも全く異なるメカニズムによるものであることにご注意ください。

 また、がん組織がパラフィンに埋め込まれたブロックになっている状態であれば、室温で(できれば冷暗所で) 長期保存できます。

32 例えば胃がんで2ヶ所に転移している場合、胃幽門付近のがん組織と空腸のがん組織を混ぜ合わせたものからワクチンを作る必要があるかと思います。十分な抗原量を得るために、胃幽門付近のがん組織2gと空腸がん組織1g以上が必要になりますか?

 いいえ、もともと同じがんならば、一方かまたは両方あわせて1.5グラム以上あれば自家がんワクチンは作製できます。

33 組織学的に見れば、各種の臓器は多種多様な細胞からできています。このような組織においては、がん抗原も多様と思われ、一つのがん組織1.5グラムから量的に十分な多種多様ながん抗原を得ることは不可能ではないのでしょうか?

 はい、その可能性は否定できません。しかし、がん細胞中のがん抗原タンパクの量は超微量です。微々すぎて測れない程の量です。

 悪性のがん細胞といえども、ほとんど全部が正常細胞と同じ正常タンパクで構成されていますから、その細胞表面に提示されるがん抗原ペプチドたるや、超微量にすぎません。

 それでも適切に活性化された免疫機構ならば、がん細胞表面に提示されている超微量のがん抗原ペプチドを識別できます。ですから、正常組織が混じっていても大きな問題になりません。免疫機構を刺激できる最低量のがん抗原量さえあれば良いのです。ただしこの最低量は個々人によってばらつきが激しいと想定されるため、結局は「自家がんワクチン」投与後の臨床的結果でしか有効性は判断できません。

34 腫瘍細胞は、全て必ずがん抗原を発現していると考えてよいのでしょうか? がん抗原を発現しないタイプのがんが存在するならば、自家がんワクチン療法は不可能と思われますが?

 がん抗原を発現しないタイプのがんは存在します。患者様の体内のがん細胞ががん抗原を発現しているか否かを検査する方法は(同定済みのがん抗原があれば可能な場合もありますが)、未同定の不特定多数のがん抗原を相手にする場合では、開発されておりません。

 それでも弊社の「自家がんワクチン」は(ホルマリン固定がん組織中にある)未同定の不特定多数のがん抗原を手がかりに免疫細胞を活性化できる点に特徴があります。どのがん抗原を使うかという選択は体内の免疫機構に任せてしまいます。

 同一個人の体内だからこそ、正常細胞とがん細胞のごくわずかな差でも峻別が可能なのです。他の合成ワクチンのように、体外から人工的に抗原を添加する方法(この場合は当たれば良いがはずれることもある)ではないのです。

 そのため、他人には使えないパーソナルドラッグとならざるを得ないのが欠点ですが...。

35 多くの抗がん剤は免疫抑制を起こします。抗がん剤療法と自家がんワクチン療法を併用することは可能でしょうか?

 原則としてはリンパ球の増殖を強烈に抑制しない抗がん剤であれば併用が可能です。また、抗がん剤投与の休薬期間中に自家がんワクチン療法を施行してしまうか、抗がん剤の投与量を低用量にして併用するという方法が考えられます。

 可能ならば、抗がん剤の影響がなくなるまでに4週間待ち、血中リンパ球数がおおよそ1000個/μL以上に回復していることを確認した上で、なお自家がんワクチン投与に6週間以上の期間が取れることが望ましいのです。もし一度でもリンパ球欠乏症を起こしたことがある患者様の場合、しっかり回復していることを確認しなければなりません。場合によっては抗がん剤療法終了後5ヶ月以上かかるとされています(Su YB, et al., J Clin Oncol 22:610-6, 2004)。

 しかし、比較的骨髄抑制作用の弱い抗がん剤を通常よりも少量投与している休眠療法などの場合で、常時、血中リンパ球数がおよそ1000個/μL以上に維持できている場合は、同時併用が可能です。

 また、最近登場してきた、分子標的薬や抗体医薬といわれるものは、T細胞増殖を抑制しない種類ならば、併用可能と推定されています。この分野はどんどん進歩していますので、併用については従来の考え方が今まさに変化しつつあります。

 (具体例はQ11の回答欄の注をご覧下さい、学術論文も提示されています)

36 免疫寛容や、逆に自己免疫疾患を起こす心配はありませんでしょうか?

 自家がんワクチンはこれまでに1000例を越える症例に投与されましたが、1人もこのような問題は発生しておりません。ただし、がん抗原が未同定のため、厳密に調査できているわけではなく、免疫寛容によると思われる臨床上の問題は発生していない、というレベルです。また逆に、自己免疫疾患らしき症状も起こしておりません。体内の免疫機構は非常に厳重に識別機構を働かせているようです。

 それでも、 禁忌はあります。自家がんワクチン投与前から、すでに自己免疫疾患があるとの疑いが濃厚な場合は、自家がんワクチンは投与できません。強い免疫刺激作用があるため、自己免疫疾患を増悪させる可能性があるからです。

37 現在まで自家がんワクチン療法の試みは1000例以上とのことですが、再発、転移、QOL改善、病巣縮小などの現在の状況について教えてください。

 「臨床試験・症例」のページをご覧ください。
臨床研究と症例報告を掲載しております。

 2006年9月末現在で、がんの中でも最悪性といわれ、最も治療困難とされる術後再発脳腫瘍(グレードIVの多型膠芽腫)12例中、CR(完全寛解)が1例(この方は6年以上生存中)、PR(部分寛解)が1例、MR(一部縮小)2例、NC(不変)1例という効果が出ております。「脳腫瘍臨床試験」のページをご覧ください。

 QOL改善例は各種のがんで非常に多数あります。ちなみに、 2002年 4月から 2004年 4月までの間で、経過報告があった予後不良(死亡)11例の中でさえも、胸水消失、腫瘍マーカー減少、可視範囲のがん組織縮小等、何らかのポジティブな反応があった症例が 55%もあります。

 この他に、情報開示承諾が得られた症例の経過については「症例報告」として掲載しておりますので「各がん種ごとの症例」をご覧ください。

 また、がん種ごとの治療実績と症例について、ソフトクライテリアで見た場合の改善率をホームページに掲示しております。
 → こちらをご覧ください。
 これまでに自家がんワクチン療法を受診したさまざまながん症例のうち、経過報告があった症例についてソフトクライテリアの観点から評価した治療成績では、全体で約1/3の症例でなんらかの改善効果が認められております。

38 サイトカインの一種であるIL-12がIFN-γを著しく誘導するという報告やIL-12にIL-18を組むとさらに著しいIFN-γの誘導が起こるという報告があります。また、IL-12はNK細胞を活性化すると言う報告もあります。今後、自家がんワクチンの処方をさらに改善する目的で変更する可能性はあるのでしょうか?

 現時点では自家がんワクチンの処方内容を変更する予定はありません。IL-12, IL-18とも確かにNK細胞のキラー活性は増強します。しかしNK細胞の増殖そのものに対しては、むしろ阻害剤となります。欧米ではIL-12単体投与が試行され、強烈な副作用のため臨床適用が断念されております。 IL-18は作用機構がIL-12とほとんど同じですから、そのまま単体で大量投与したのでは問題を起こす可能性があると言われております。

39 がんが体内に形成される段階で成立しなかった免疫が、なぜ、そのがん組織をワクチンとして体内に戻した場合に成立するのですか?

1)自家がん組織断片を体内の樹状細胞に直接取り込ませるよう、アジュバントとともに注射するのがキーポイントです。体内の未成熟型樹状細胞がこの取り込み能力が高い点を狙います。取り込むと直ぐに所属リンパ節に移行し、そこで成熟しつつ、ヘルパー型Tリンパ球を刺激し、さらにそれを介してキラー型Tリンパ球(特にCTL)を活性化します。これが血流に乗って体内を移動、がん細胞に接触したとき、さらに活性化を受け増殖しつつがん細胞を殺します。がん細胞を殺すようになれば、細胞性免疫が成立したと解釈できます。

2)なお、細胞性免疫が成立するためには、がん細胞側にある程度以上のがん抗原が含まれていないといけません。この量は超微量で良いのですが、実際上どのくらい必要なのかは全く不明です。術後肝がんの場合、ホルマリン固定組織1グラム以上からならば、作成した自家肝がんワクチンは明瞭に肝がん再発抑制効果があることがわかっており(Peng BG, et al., Jpn J Cancer Res 93:363-8, 2002)、この我々の経験から、他の種類のがん患者様では若干の余裕をみて1.5グラム以上は必要と申し上げております。しかし、がんの種類、個体差によっておおいに違う可能性があります。

3)もう一つ重要なのは、体内に残っているがん細胞表面にMHC-class I分子が発現していて、その上にがん抗原ペプチドが提示されていなければCTLが異常細胞だと認識できないという点です。通常、MHC-class Iの発現は頻度が低いと言われており、これを刺激する方法の1つがIFN-γ投与です。IFN-γ投与の代わりにBCG-CWSなどの菌体成分を使って体内でIFN-γを産生させている研究者もおります。IFN-γ投与によりがん細胞によってはMHC-class I発現が上昇するものがあり(全部の場合とは限りません)、CTLにより殺されやすくなるというわけです。

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