ドクター通信

249 第8回がんワクチン療法研究会から―その2

24

Nov

 先週土曜日(11月19日)、第8回がんワクチン療法研究会が東京女子医大にて開催されました。ドクター通信 from セルメディシン No. 248に続き、特に注目された一般演題についてご報告します。ユニークで参考となる症例報告がありました。この他にも演題が発表されています。

<一般演題>

1.術後リンパ節転移を来した肝細胞癌に対し自家がんワクチン療法を施行した一例

  小池直人、眞﨑義隆、河上牧夫(聖隷佐倉市民病院)

 肝がんでリンパ節転移ありの場合は、mOSが8~10ヵ月しかない。この症例は再発リンパ節を切除し、自家がんワクチンの抗原とした症例で、接種後1年10ヵ月間リンパ節は無再発。しかしこの間、肝内に異時性に再発した。ただし、いずれも細胞の病理画像が明らかに異なっていた。しかも、リンパ節切除前にはなかった腫瘍マーカーが出現したことから、抗原としたも
のとは別種のがん細胞が出現したと考えられた。

(筆者注:この症例は、同一人・同一臓器のがん細胞のなかでも異なるがん抗原発現があり、自家がんワクチン接種によって体内で活性化されたキラーリンパ球が抗原として使用された分子を非常にシャープに識別し、それを発現しているがん細胞のみを殺していることを示している。自家がんワクチンに使用する抗原は、同一臓器由来のがん細胞を標的にする場合で
あっても、不応性のがん細胞のエスケープを許さないよう、できるだけブロードな範囲をカバーできるように「原発+複数の転移」がん組織であることが望ましいことを示している。)

2.自家癌ワクチン投与前後のT-cell分画の変化と予後

  倉西文仁、他11名(尾道総合病院、セルメディシン)

 乳がん術後、CEF6クールの化学療法を標準治療としているが、その終了
1-2ヵ月後ではDTH-2反応が陽転しない、2-3ヵ月は間を於かないといけない。
これで9割が陽転するという。

 また、当社HP掲載の肺がん〔症例0144〕のその後の発表があった。再発
リンパ節を放射線照射したのみで(化療なし)4年間CR状態が続いている。
このことから、「自家がんワクチンを先行投与し放射線治療を行った方が
よい」のではないか、と提案していた。

4.当院における自家がんワクチン療法施行症例の検討

  三好立、朝日厚子、丸山隆志、片岡達治(銀座並木通りクリニック、
  東京女子医大)

 当社のソフトクライテリア評価(改善率)を採用して、脳腫瘍を除き、
これまでに銀座並木通りクリニックにて自家がんワクチン療法を受診した
頭頸部以下のがん症例について分析したもの。

 自家がんワクチン症例の追跡率は86%(54/63例)、Stage IVが全体の
73%を占めており、その45症例のみでは、mOS=7ヵ月であった。根治2%
(1例)、無再発11%(6例)、改善率はがん種全体で43%(23/53例)
n=63のKaplan-Meier curveからmOS=13ヵ月、3年生存率30%、5年生存率
18%。

(がん種全体の改善率43%は、当社平均35%より高い !!)

 治療開始時に肉眼的病変がない症例では、自家がんワクチンは補助療法
という位置づけになるが18例(29%)いる。その改善率は61%(11/18例)、
3年生存率は100%。

 一方、再発後の治療開始例の改善率は27%(12/44例)で、他治療が入
っているため自家がんワクチンの効果か否かわかりにくいが、3年生存率
15.6%、mOS=27ヵ月。

 以上から、補助療法として(特に肝がん、乳がんでは)、自家がんワク
チンは推奨できる。プラスして放射線治療もよい。

 また、肺腺がんIIIa(T1N2M0)の術後で「自家がんワクチン+放射線治
療(縦隔、右頸部)+低用量抗がん剤治療」後、4年無再発生存中の著効
例が示された。従来の経験では「放射線治療+低用量抗がん剤治療」だけ
ではここまで行かないことが多い(非照射野リンパ節で転移が多発してく
る)ことから、CA19-9値の上昇から一旦無効と判断された自家がんワクチ
ンの影響が、縦隔・右頸部リンパ節への放射線治療後に発現、重複治療の
効果として出たのではないかと推定されたという。

(筆者注:この点は上記2.の演題でも同じ)

 また、膵頭部がん術後、上腸管膜動脈根部リンパ節転移症例では、自家
がんワクチン+低用量ジェムザール継続治療で、1年間SD、3年後にCRとな
った1例が示された。

5.悪性神経膠腫に対する自家腫瘍ワクチンを用いた免疫療法の治療成績

  丸山隆志、村垣善浩、伊関洋、大野忠夫、岡田芳和(東京女子医大、
  セルメディシン)

 2005年以降に東京女子医大で「手術+初期治療後に未再発(抗がん剤によ
る維持療法はなし)」20例+「初回治療(初期治療+維持療法)後に未再発」
6例の計26例(いずれも多形膠芽腫GBMで治療終了後は外来通院可能な症例)
に自家がんワクチンを投与した場合では、mPFS=14.2ヵ月、mOS=37ヵ月とな
った。

(筆者注:このデータは驚くほど良い成績である。ただし、PSが良好な患
者選択バイアスあり、という)。

 丸山先生が扱ったGBM66例中、
(RT:放射線治療、chemo:テモダール治療、AFTV:自家がんワクチン療法)

  1.RT+AFTV(2005以降の臨床研究) →chemo    18例
  2.RT+chemo→再発→AFTV               21例
  3.RT+chemo初期治療→AFTV             19例
  4.RT+chemo初期治療→chemo維持療法→AFTV   8例

の全体では、mOS=30.4ヵ月、3年生存率44.1%、5年生存率23.4%。4.群の
8例だけならmOS未達だという。

(筆者注:GBMに対する自家がんワクチン療法の科学的評価は、ランダム化
対照臨床試験を行っていないので、まだ定まってはいない。それでも患者
サイドからこのデータを見た場合、PSが良好な患者選択バイアスありだと
しても、通院可能で再発前のGBMならただちに補助療法として自家がんワク
チン療法を受けた方が安心だ、という結果と言える。仮に途中で再発した
としても、半数は3年以上も生き延びられるのである。現在の標準療法
「RT+chemo初期治療→chemo維持療法」だけでは、mOS=14.6ヵ月にすぎない。
患者選択バイアスを消去したhistrical controlとの比較データは、前号
ドクター通信 from セルメディシン No. 248 を参照されたい。自家がん
ワクチン投与群と非投与群の間では、mOSは前者が28.5ヶ月、後者が22.2ヵ
月となり、有意差が検出されている。)

6.膠芽腫患者に対する自家腫瘍ワクチンと放射線・化学療法を用いた多施
  設共同試験の経過報告

  石川栄一、他15名(筑波大、他)

 現在進行中の脳腫瘍臨床研究の中間解析。この試験では、テモダールを含
むGBMの標準治療に自家がんワクチン療法を上乗せしている。前回の臨床研
究では、標準治療がまだなく、放射線治療中に自家がんワクチンを接種して
いた(再発後にほとんどの症例でテモダールを投与)。解析可能な15例では、
mPFSは7.3ヵ月、mOSは未到達(25.8ヵ月以上)。残存GBMが消失した症例もあ
り、希望が持てる。