ドクター通信
233 アメリカ癌学会(AACR2011)の話題から
02
May
今年のアメリカ癌学会(ACR2011)が4月2日~6日の間、フロリダ州オーランドで開催されました。弊社からも尾道総合病院との共同研究で演題を出しています。以下はこの学会全体の要約です。
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今年は、がん免疫療法の効果が臨床で認知され、実用化が一斉に始まっているとの印象を受けた。特に、昨年のSpleucel-T (Provenge)のFDA承認と、昨年のASCO2010で最もホットな話題だったIpilimumabによるメラノーマの生存率の延長成功(これも、本学会直前の3月28日にFDAが承認)が効いているように思われた。
また、昨年段階では「期待されていたペプチドワクチンも樹状細胞療法も、それぞれ単一療法では効果不十分だ、と講師に壇上から宣告されてしまう始末」だったが、もはやそれは常識化している様子で、単一療法にこだわる傾向はどの発表からも感じられなかった。
がん免疫療法一般に言えることだが、効果を表すまでには時間がかかり、短期間の奏効率や増悪開始までの期間の観察では、化学療法に比較すると特別高い効果がみられない。しかし、全生存率でみると明らかに延命効果があるのが特徴である(がん免疫療法は一般に重篤な副作用がなく、患者にとってどちらの治療法がメリットが大きいかは歴然として
いる)。
この問題点を克服するためでもあろうか、特にがん化学療法に際して免疫療法との併用で成功したという報告が目立った。
第1日の教育講演(Kroemer G, INSERM U848, France)で、
・化学療法は免疫細胞によるがん細胞への攻撃を容易にすること、
・患者の免疫能力が予後に関係する主要な要因であること、
・化学療法により殺されたがん細胞がimmunogenicな状態で死んでいなければ、化学療法自体が最大効果を発揮できないこと、
が述べられていた。
これだけでも、化学療法における抗がん免疫反応の重要性は理解できるが、Phase IIIの決定的な試験結果が最終日のポスターに発表されていた。イタリアのCorreale Pらによるもので、結腸直腸がんに対するFOLFOX-4治療を対照群として、「gemcitabine + oxaliplatin + levo-folinate + 5-FU + IL-2 + GM-CSF」(GOLFIG/2レジメン)を適用、多
施設phase III試験の結果、中間解析段階で成功、打ち切り終了したと発表していた。
FOLFOX-4は複数の抗がん剤を組み合わせた大腸がん化学療法の代表例で標準療法として採用されている。GM-CSFは樹状細胞に、IL-2はリンパ球に必須のサイトカインであり、GOLFIG/2レジメンは化学療法に免疫療法を積層した形になっている。
この際、患者のPS、がん組織中へのT細胞(抑制性T細胞とセントラルメモリーT細胞)の浸潤度合が予後予測因子となっていると述べておりよほどの自信がある結果と見えた。今後、大腸がん治療には確実にがん免疫療法が取り込まれていくであろう。
前立腺がんに対しては、Spleucel-Tの開発者のKantoff PWが、まだ商用が始まったばかりでPSAレベルでみた奏効率は2%に過ぎない、1年6ヶ月の間は対照群との間では差が出ないと言っていた。また、ウイルスに組み込んだ前立腺がんワクチンProstvac-VF-TRICOM (Kantoff, J Clin.Oncol., 2010)の臨床試験では、無増悪期間(PFS)を主要評価項目に設定して失敗した(対照群に比べて差なし)、しかし、全生存期間(OS)で比較すると(n=122、p=0.006で)統計学的に見て明瞭な延命効果があり、現在globalスケールでphase IIIに入っているという。
この研究でも、治療開始後の短期間では有効性が観察できないが延命効果があるというがん免疫療法の特徴がよく出ている。
この事実からも、弊社の「自家がんワクチンについて:臨床医の先生方へ」
(→ http://www.cell-medicine.com/material/AFTV-for-Drs.pdf )
という黄色いタイトル帯のある案内書(v. 6.2)の冒頭にかかげた標語
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(抗がん剤が効きにくい)スローな癌こそワクチンで
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は理解していただけるのではなかろうか。
また、Ipilimumab(T細胞表面にあるCTLA-4タンパクへの抗体)はメラノーマに承認されたものだが、Sharma P(MD Anderson Cancer Center)はこれを前立腺がんに応用、OSが延びると言っていた。Allison JP(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)によれば、すでに腎がん、卵巣がん、肺がんでも成功しているという。
Ipilimumabの承認に刺激されて、CTLA-4と同様のT細胞活性化抑制タンパク群(PD-1とTim-3)に対する抗体の効果も調べられていた。そのうち抗PD-1抗体(もとは日本の小野薬品が開発)はIpilimumabよりも効果が大きいという(Drake CG, Topalian SLなど)。
メラノーマで奏効率は、IL-2治療で~15%、抗CTLA-4抗体では~10-15%、抗PD-1抗体(n=56)なら~30%だそうである。
PD-1と同時にT細胞上に発現されるTim-1分子も抗体で阻害すると、T細胞によるサイトカイン産生も回復したという(ポスター#3657でFourcade J他、シンポジウムImmune Checkpoint BlockadeでAnderson ACが発表)。
この他、Finn OJ(Pittsburgh大)は、前がん状態と診断された大腸がんポリープ患者を対象にして、MUC-1 long peptide vaccineが癌化を予防できるかの臨床試験に入っていた。
Disis ML(Washington大)もmultiantigen polyepitope vaccineの方がシングルペプチドワクチンよりもがん予防効果がすぐれている(マウス乳がんモデルで)と報告していた。
やはり、多種類のがん抗原に対する免疫反応が起きた場合の方がよい。それならば、未知のがん抗原まで含まれる元のがん組織を丸ごと抗原として使う方がもっと良いはずというロジックが成り立つ(自家がんワクチンはこの方針に合致している)。
尾道総合病院(弊社との共同研究)からの演題では、術後乳がん症例32例に自家がんワクチンを投与した場合、27例(84%)でDTH反応が陽転し、陽転群では末梢血T細胞中で免疫反応の重要な指標が有意に上昇するという結果を発表した。
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上述のように、アメリカ癌学会では、患者様の免疫状態が「従来の治療法に影響する」という点は常識となってきています。
本邦では、いまだに重篤な副作用をともなう化学療法1本やりでがん治療を行う臨床医の先生方が圧倒的に多いのですが、患者様の免疫状態を無視して化学療法を強行することがはたして患者様のメリットになるのか、はなはだ疑わしいと思われます。
(付記) 弊社では、患者様の免疫状態が保たれていることを表す指標の一つとして、末梢血リンパ球数が1000ヶ/mm^3以上あることを目安としております。これは必ずしも厳密な基準ではなく、減少していたリンパ球数が現在回復途上にあるならば、1000ヶ/mm^3に満たなくても免疫状態は改善しつつあり自家がんワクチン療法は実施可能、と解釈しています。








