ドクター通信

234 大腸がん--病理診断よりも免疫細胞集積の方が予後を占う--その後

18

May

 4年前のドクター通信 from セルメディシンNo. 75 (2007.01.05発信)で「大腸がん-病理診断よりも免疫細胞集積の方が予後を占う」という、以下のニュースを発信しました。

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さて、今年早々、1月号のNATURE CLINICAL PRACTICE GASTROENTEROLOGY & HEPATOLOGY誌のハイライト欄に、大腸がんの予後は、伝統的な腫瘍病理組織診断によるよりも、がん組織内ないし辺縁部への免疫細胞の集積度が予後を占うというニュースが出ています(1)。

 ニュースのもとになったオリジナル論文(2)によれば、in situ免疫染色で、CD3+, CD45RO+メモリーT細胞ががん組織内/辺縁部に少ない症例は予後が悪く、多い症例は予後が相対的によいとされています。どの程度in situで免疫反応が起こっているかが、リンパ節転移の程度や局所における癌の進行度に関係なく、むしろ予後によく相関するとのことです。

 Multivariate analysisによれば、Overall Survivalとの間では、CD3+ T細胞密度が唯一相関し、通常の病理診断データのみではdisease-free survivalともoverall survivalとも相関性が不十分だ、との結果から、現在の病理診断によるステージングでは不十分で、免疫反応の強弱を予測因子に取り込むべきだと著者らは結論づけています。

 この結果から簡単にわかることは、強烈な化学療法によってがん治療を行うと細胞性免疫反応を担うT細胞を同時に殺してしまい、かえって患者の予後悪化をまねきかねない、ということです。

 患者の免疫力を殺してしまっては延命は期待できない、という点は極めて重要だと思います。
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 この続きで、各種のがんについて同様のデータを集めたJochems and Schlomの総説が今月発表されました(3)。その中では、通常の診療を受けた症例(すなわちほとんどが通常の化学療法を受けた症例)で、がん組織中に浸潤した各種のT細胞と予後との相関を示す論文が、大腸がんだけでも20報、肝がん・卵巣がんで各4報、膵臓がん・食道がん・子宮内膜がんで各2報、胆嚢がん・子宮頚部がん・膀胱がん・尿路上皮がんで各1報が
引用されています。

 もはや、がん組織中にある免疫細胞が予後決定因子の一つになっていることは疑いありません。

 また、これを演繹すれば、「化学療法で有効となるには細胞性免疫反応ががん局所に起こることが必要だ」、また、「細胞性免疫反応を起こせる素地がない患者では、化学療法の効果も期待できない」と言えるのではないでしょうか。

 いわゆる「標準療法」では、末期がんに対してしばしば大量化学療法が施行され、強い骨髄抑制を惹起して体内の免疫反応系を破壊し、再起不能にしてしまうことがあります。

 このような大量化学療法が真に患者のためになっているかどうか、はなはだ疑わしいと思われます。


REFERENCES

1. Is immunology more important than histopathology for colorectal
cancer prognosis? NATURE CLINICAL PRACTICE GASTROENTEROLOGY &
HEPATOLOGY 4: 4-5, 2007.

2. Galon J et al.: Type, density, and location of immune cells
within human colorectal tumors predict clinical outcome. Science
313: 1960-1964, 2006.

3. Jochems C and Schlom J, Tumor-infiltrating immune cells and prognosis: the potential link between conventional cancer therapy and immunity. Exp Biol Med 2011; 236: 567-579. DOI: 10.1258/ebm.2011.011007