ドクター通信

209 腫瘍血管を正常化するというがん治療法

20

Jul

 NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究で、「旭川医科大学では、血管再生能を持つ細胞の移植によってがん細胞周辺の腫瘍血管を修復(リモデリング)する治療技術を開発した」という発表が、先週7月13日にありました。

 → http://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/press/CA/nedopressplace.2008-11-26.1174332432/nedopress.2010-07-07.1023147836/

 腫瘍血管は、腫瘍内とその周囲にランダムな方向に走る非常に細かい毛細血管の網として出現します。この発達を阻害するのがベバシズマブ (bevacizumab、アバスチン)です。いわば腫瘍血管を潰すことによってがん組織を兵糧攻めにして治療しようというのが現在の考え方なのですが(低酸素、低栄養に強いがん細胞が生き残るという欠点があります)、旭川医科大学の方法は全く逆です。

 血管再生能を有する骨髄細胞を注入して、腫瘍血管ではなく、あえて立派な正常血管を腫瘍とその周囲に発達させ、血液を十分供給できるようにして、【1】がん細胞を低酸素環境におかないようにする、【2】薬剤供給路を確保する、という戦略です。

 これによって放射線治療と抗がん剤治療の効果を高めています。まだマウス実験段階のため、臨床で同様に成功するのか、今後の研究に注目すべきですが、たいへん面白い逆転の発想だと思います。

 このようなチャレンジングなアイデアに、わが国でも大型研究費を供給するようになったことに筆者は感心しています。少なくとも数年前までは、公的研究費を申請すると、「そのような研究は他に誰がしているか」という質問をされ、欧米で誰かが先導していると、それなら安心とばかりに研究費が付いたという記憶があるからです。

 本当は、「そのような研究は他に誰もしていない」から研究費をつけるのでなければ、真のオリジナリティは発揮できないのです。わが国も、明治維新以来の西洋崇拝思想から脱却しつつあることを、上記の発表を聞いて感じた次第です。