ドクター通信

191 単一乳がん患者内の転移にともなう遺伝子変異

13

Oct

 最新の超高速DNAシークエンサーは、2000年のヒト全ゲノム塩基配列決定時の状況に比べれば、ゲノムワイドであれ、あっという間といえるほどの短期間で塩基配列を決定できるようになって来ています。

 今般、カナダのグループは、一人の乳がん患者の原発部位と転移部位(9年後の再発がん)の全ゲノム(121Gb)をシークエンスし、32ヶ所のpoint mutationを発見、うち19ヶ所は転移部位に特有であることを見出だしています(1)(この論文内では各遺伝子の機能変化までは触れていませんが)。

 このように、low or intermediate grade primary breast cancerでさえ、転移に伴うmutationが早いスピードで起こっているとすれば、単純ながんペプチドを抗原とするがんワクチンでは、そのがんペプチドに対応する遺伝子や発現制御遺伝子群にmutationがおこれば、たちまち転移がんに対する対処が難しくなる可能性が高いと思われます。

 患者特有の全てのがん抗原を含む自家がん組織を原料にした自家がんワクチンなら、未知のがん抗原さえもカバーしていますので、mutationの影響を受けていないがん抗原も使えるため、転移がんに対する有効性も維持できると考えられます。

REFERENCE

1. Shah SP, et al.: Mutational evolution in a lobular breast tumour profiled at single nucleotide resolution. Nature 461: 809-813, 2009. doi:10.1038/nature08489.