ドクター通信

187 1. 抗体の殺がん細胞作用の新しいメカニズム:ライソゾームバースト
2. FDA承認獲得のための抗がん剤新薬開発コスト

29

Jul

今回はASCOのニュースから2題転載します。

1. 抗体の殺がん細胞作用の新しいメカニズム:ライソゾームバースト
(July 21, 2009配信)

抗体ががん細胞表面に結合してがん細胞を殺すメカニズムとしてはこれまで、
(1) ADCC(Antibody-dependent cellular cytotoxicity、抗体依存性細胞傷害作用):がん抗原に抗体が結合し、結合した抗体のFc部をNK細胞やマクロファージが認識し、標的細胞を殺す作用。
(2) CDC(Complement-Dependent Cytotoxicity、補体依存性細胞傷害作用):抗原と抗体との複合体などにより補体結合が促進されることによって、標的細胞を殺す作用。
(3) 直接作用:増殖因子やそのレセプターを介した、ADCC/CDC非依存的な標的細胞のアポトーシス誘導作用が知られておりましたが、このほどInanovら(1)は、
(4) 抗体が抗原に結合した後、細胞内のライソゾームをバーストさせ、遊離したライソゾーム酵素が細胞内を破壊する、という殺細胞メカニズムを発見したそうです。このメカニズムを亢進させる化合物を発見できれば、新しいタイプの抗がん剤として登場するかもしれません。

2. FDA承認獲得のための抗がん剤新薬開発期間とコスト
(July 28, 2009配信)

本邦でも抗がん剤開発に時間とコストがかかりすぎることが問題になっていますが、本邦よりは早くてコストも安いと言われている米国でも、臨床医の視点から見ると事情は同じようです。

FDAはAccelerated approval (AA)というプログラムを始めておりますが、それでも、承認獲得まで6億ドルのコストと7年の時間がかかると報告されています(2)。資金的に豊かといわれる米国のバイオ企業でもここまでは負担しきれない、がん患者も待てないとこの記事には記載されています。

弊社は本邦独自の自由診療制度を利用して、「自家がんワクチン」療法を展開しておりますが、「最先端の治療法をすばやくしかも低コストで患者様に届ける」という視点からすれば、この自由診療制度は大きな意味があります。ただし、安全性と効果に十分自信があってのことであるのは言うまでもありません。

REFERENCES

1. Andrei Ivanov et al.:
Monoclonal antibodies directed to CD20 and HLA-DR can elicit homotypic adhesion followed by lysosome-mediated cell death in human lymphoma and leukemia cells.
J. Clin. Invest. doi:10.1172/JCI37884.(http://www.jci.org)

2.Accelerated FDA approval of cancer drugs may take about seven years, study indicates.JCO News, July 28, 2009
(原報:Elizabeth A. Richey et al.: Accelerated Approval of Cancer Drugs: Improved Access to Therapeutic Breakthroughs or Early Release of Unsafe and Ineffective Drugs? JCO Early Release, published online ahead of print Jul 27 2009. J Clin Oncology, 10.1200/JCO.2008.21.1961)