ドクター通信

180 ASCO2009の最新情報から--化学療法におけるQOLの定量的評価

03

Jun

今年のASCO2009が、米国フロリダ州オーランドで、5月29日から6月2日まで開催されました。弊社からも社員が参加、情報収集にあたっていますが、さすがに日経メディカルは報道機関だけあって速報を流しています。
→ http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/gakkai/asco2009/

その中で、6月1日に掲載された記事に、「Vandetanibとドセタキセルの併用でNSCLCの無増悪生存が延長、症状も軽減」という肺がんに関するものがあります。
→ http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/asco2009/200906/510954.html

M. D. Anderson Cancer Centerが主体になった大規模無作為化二重盲検フェーズIII試験「ZODIAC」の結果報告ですが、
「主要評価項目であるPFSの中央値は、vandetanib+ドセタキセル群で4.0カ月、プラセボ+ドセタキセル群は3.2カ月、ハザード比は 0.79(97.58%信頼区間0.70-0.90、p<0.001)と、vandetanibの追加投与でPFSは有意に改善した。」
とあり、また、
「奏効率(ORR)はvandetanib +ドセタキセル群では17%、プラセボ+ドセタキセル群では10%(p<0.001)、6週間以上の病勢コントロール率はそれぞれ60%、55%であった(p=0.060)。」
とまでは良いのですが、
「全生存は統計的に有意ではなかったが、vandetanib +ドセタキセル群で10.6カ月、プラセボ+ドセタキセル群は10.0カ月と、併用群でやや良好な結果を示した、p=0.196)」
という、あまりいただけない結果になっています。

はたして、全生存率が延びない分子標的薬の追加治療に意味があるのか、議論のあるところだと思います。

ただ、この試験の救いは、「FACT-Lを用いて、肺癌の症状(息切れ、体重減少、思考、咳、食欲、胸部圧迫感、呼吸)を評価したところ、vandetanib +ドセタキセル群の方が有意に改善していた(ハザード比 0.77、p<0.001)。安全性に関しては、新たな有害事象の発現は見られなかった。」という点で、ようやく化学療法でも、安全性データと並行して、FACT-Lによる患者のQOL変化の定量的評価が行われるようになってきた点です。

がん免疫療法分野では、「自家がんワクチン」も含めて、ほとんどの種類のがんワクチンで、QOLの低下をもたらす報告はなく、面倒なFACT-Lによらず、定性的にみてさえも全く問題ない方法ばかりです。

免疫療法単独による短期的な奏効率(ORR)は化学療法に比べて低いかもしれませんが、一般にSDが多く発生し、全生存率が延びる傾向が見られます。今後、確かに全生存率が延びるという、大規模試験による証明が出てくれば(数十億円レベルの巨額な費用がかかります)、将来的には化学療法をしのぐ治療法に発展する可能性があります。