ドクター通信
160 第5回がんワクチン療法研究会から-その3
28
Nov
先週22日(土)、東京・秋葉原にて第5回がんワクチン療法研究会が開催されました。今回の会では、「低用量化学療法」の効果とがん免疫療法との併用例の検討が主題です。
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前号に続き、以下に注目された一般演題を紹介します。
【一般演題1-1】
低用量抗癌剤併用下に自家癌ワクチン療法を施行し3年8ヶ月の無再発を得た進行胃癌の一例
これは尾道総合病院からの症例報告ですが、2005年1月の手術時に腹水中細胞診で陽性のため非治癒切除に終わった方です。しかも術後のUFT内服治療(300mg/day)では、薬疹が発生したため、患者は処方薬をほとんど服用していないという、結果的には「自家がんワクチン3コース+超低用量UFT」併用になってしまった症例です。
2008年9月に肝転移とリンパ節再発を認めるまで3年8ヶ月無再発を得、現在生存中です。術時の腹水混濁状況からはこれほどの長期間無再発は考え難く、マイルドな化学療法との併用が奏効したものと思われます。
【一般演題1-2】
自家腫瘍ワクチンとテモゾロマイドの併用療法で著明な縮小を認めた膠芽腫の1例
Glioblastoma multiformeは進行がんの中でも特に治療に難渋することが知られていますが、現在標準治療となっている「手術+放射線+テモゾロマイド」治療後の再発症例に、間歇的テモゾロマイド維持療法の合間に自家がんワクチン1コース接種を挿入したところ、わずか1ヶ月でPRとなったという、筑波大からの報告でした。
本例では、「放射線再照射が行われていない点と、1コース目のテモゾロマイド内服のみでは腫瘍縮小を認めなかった点より、自家腫瘍ワクチンもしくは、テモゾロマイドとの併用が腫瘍縮小の原因となった可能性が高いと推測される」と述べています。
【一般演題1-4】
自家ワクチン療法を施行した神経膠芽腫に関する治療経験
これは、東京女子医大脳外科・銀座並木通りクリニックからで、2003年3月~2007年12月の間のGlioblastoma multiforme(GBM)治療例29例をまとめた報告でした。
興味深かったのは、「初発症例:手術+放射線+ワクチン療法」17例と、「初回症例:手術+放射線化学療法(ACNU, VCR) → 再発前にワクチン施行」7例の比較でした。他に「再発症例:手術+放射線化学療法 → 再発後にワクチン施行」5例があります。
「初発」と「初回」の定義を混同しやすいのですが、後者には化学療法が含まれている点が違います。「初発」のOS中央値は21.4ヶ月、しかし、「初回」症例のそれは38.2ヶ月もありました。
しかも、初回症例中には、50.5ヶ月と33.9ヶ月という、従来常識では考えられない長期生存例が2例出ていました。
「再発」症例のOS中央値は19.7ヶ月で、これでも、(再発症例が含まれず初発GBMを対象にした)標準治療の根拠となったStuppの報告「手術+放射線+化学療法(テモゾロマイド)」のOS中央値14.6ヶ月よりも長くなっています。
演者は、「GBM初期治療にて自家ワクチン療法を施行した29例では、現在標準とされている手術+放射線+テモゾロマイドに比べてOS、PFSいずれも成績は上回っていた」と結論づけています。
ロビーで聞いた演者の感想は、「分析してみて、自分でもびっくりしました、こんなに効いているとは」というものでした。GBMでは、少なくとも「手術+放射線化学療法」の初期治療後、"再発前に"、「自家がんワクチン療法」を実施すれば、3年以上も生き延びられる可能性があることを示唆しています。
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自家がんワクチンは放射線治療との相性が良いことを示す発表は、他にもありました。
【一般演題1-3】
「切除・電子線照射・自家癌ワクチンの併用」が奏効した再発下腿MFH (malignant fibrous histiocytoma) の一例
つくばセントラル病院からの報告では、「四肢MFHは根治術後も約44%に再発・転移を生ずる予後不良の疾患」とされており、「再発腫瘍切除後の局所再発や遠隔転移を抑制する有効な治療法は確立されていない」とのことです。
今回の症例は、根治術後の再発例で、他院では下肢切断を宣告されていた方ですが、自家がんワクチンと電子線照射の併用により下肢切断を回避、現在も再々発なく、術後2年10ヶ月経過後も完全社会復帰しているとのことです。
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以上のように、最難治性がんであるGBMでさえ、標準治療の2倍以上のOS中央値になるというほどの好成績になるならば、他のがん種でも、「手術+放射線+(免疫系を壊さない低用量の)化学療法+自家がんワクチン」という治療体系に変更することによって、がん治療成績を大幅に向上できる可能性があります。
今後、弊社では、真摯にこの可能性を追求して参りますが、どうか読者の先生方にも前向きにご検討賜れれば、たいへん有難く存じます。
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今回のがんワクチン療法研究会では、これらの他にも、
【一般演題2-1】
自家がんワクチンによる肝癌の再発予防あるいは進展阻止効果についての検討(京都府立医大、たけだ免疫・遺伝子クリニック)
【一般演題2-2】
樹状細胞調整法の工夫と肝癌免疫療法の開発(金沢大)
【一般演題2-3】
イヌおよびネコの自然発症腫瘍に対する自家がんワクチンの評価(鳥取大)
の発表がされ、自家がんワクチン治療法から樹状細胞療法にまで、研究対象の間口が広がってきています。今後この研究会は、他のがん治療法を巻き込み、益々発展していくものと思われます。








