ドクター通信
141 基盤的癌免疫研究会の話題から--その1
07
Jul
7月2-3日に大宮ソニックシティで、表記の研究会が開催されました。この会は、とかくウサンクサイとのイメージが先行していた腫瘍免疫反応を分子機構から解明し、科学的な基盤に立ったがん免疫療法の開発を行うべく、1996年に設立された研究会です。この会での議論は非常に活発で、いまだかつて討論時間が守られたことがないという特徴があります。来年度からは、日本癌免疫学会に衣替えする予定です。
今年の会では目玉として、「シンポジウム:ここまで進んだ抗体のトランスレーショナルリサーチ、臨床応用」、「ワークショップ:癌ワクチン療法の標準化を目指して」が開催されました。そのうち、以下は、シンポジウムから印象に残った話題です。
●ヒト化CD26抗体を用いた悪性中皮腫及び同種・骨髄移植後のGVHDに対するTR研究
(東大医科研・森本幾夫)
CD26がT細胞上に発現しており、β1インテグリンとコラーゲン受容体であることによる治療用抗体を開発中。この抗体が骨髄移植で起こるGVHDを抑制できることを重度免疫不全のNOGマウスで示しているが、今回の発表のキーポイントは、CD26が付着性のヒト悪性中皮腫細胞に発現していて、反応性炎症細胞には発現していないことを発見したことにある。中皮腫治療とT細胞毒性が両立するのか、あやうさを感じないでもなく、今後の臨床効果に注目したい。
●抗CCR4抗体 "ベンチからベッドサイドへ"
(名古屋市立大・石田高司、上田龍三)
上田研では長年にわたって成人T細胞性白血病ATLLの研究を行ってきたが、ATLL細胞の表面にCCR4の特異的発現を発見した。しかもCCR4は制御性T細胞Tregに特異的に発現していることから、ATLLはTregが癌化したものだと判明している。
抗CCR4抗体を脱フコース化した抗体は治験phase Iで強烈な効果を示し、0.1mg/kgという少量の1回注射で、ATLL患者末梢血から一夜にしてATLLをほとんど除去、繰り返し注射で容易に完全寛解に導入していた。脱フコース化抗体の威力は大きく、今後、急激に脱フコース化抗体が普及すると考えられる。
●ヒト化抗IL-6レセプター抗体の癌治療への応用
(阪大・吉崎和幸)
阪大・岸本忠三先生発見のIL-6がミエローマの増殖因子であることから、レセプターを塞ぐ抗体・抗IL-6R抗体を開発したもの。多発性骨髄腫に適用したが、一過性の効果にとどまり成功はしていない。しかし、IL-6が炎症性因子の一つで発熱、倦怠、食欲不振を誘導するため、キャッスルマン病(IL-6異常産生を起こす極めて稀なリンパ増殖性の疾患で、症状としてダルさが顕著)に適用し、解熱・倦怠感改善に成功した。関節リウマチにも適用を拡大している。
癌終末期の悪液質状態では、IL-6レベルの上昇が見られるが、この抗体でヌードマウスの悪液質(体重減少で簡単に計れる)の改善が可能なことを見出した。
この抗体はトシリズマブ(商品名アクテムラ)として2005年4月11日に承認、中外製薬から販売されている。適用外だが、悪液質に陥ったがん患者にこの抗体を使用すれば、一過性にせよQOLの改善(倦怠、食欲不振)が見込めると推定していた。








