ドクター通信

133 固定した血管内皮細胞ががんワクチンになるならば

20

May

 「輸血・細胞治療学会、東大輸血部の津野助教、細胞ワクチンを用いた抗血管新生療法が再発悪性脳腫瘍に有効と報告」と題され、4月28日のBiotechnology Japanのオンラインニュースに掲載されましたので、ご記憶の方もおられるかと思います。

 この材料となった細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をグルタールアルデヒドで固定したもので、腫瘍細胞ではなく正常細胞です(Ref. 1)。正常細胞を抗原にすることで惹起した抗血管新生療法が脳腫瘍に 有効というわけですが、もしそうならば、当社の「自家がんワクチン」には、がん組織内の新生血管もそのまま含まれていますので、それも結果的に抗血管新生効果をもたらしている可能性があると考えることができます。

 当社からのドクター通信 from セルメディシンNo. 55 (2006.07.19)では、「がん細胞本体の脇を攻める」との表題で、がん組織中の線維芽細胞に特徴的な分子Fibroblast activation protein (FAP)がワクチンの抗原となることを指摘しました。メラノーマの特異的抗原を負荷した樹状細胞ワクチンと併用すると、それぞれ単独では見られない強い腫瘍拒絶効果を発揮するとの論文が出ています(Ref. 2)。

 もちろん証明はまだ出来ていませんが、理論的には、「自家がんワクチンは、がん組織内のがん抗原とともに、がん組織に特徴的な正常細胞由来の抗原まで無駄なく利用しており、両者の抗原があいまって治療効果を発揮している」と想定することが可能です。

 一つの考察として、参考にしていただければ幸いです。

REFERENCE

1. Okaji Y, et al., Pilot study of anti-angiogenic vaccine
using fixed whole endothelium in patients with progressive
malignancy after failure of conventional therapy. Euro. J.
Cancer 44: 383-390, 2008.

2. Lee J, et al., Tumor immunotherapy targeting fibroblast activation protein, a product expressed in tumor-associated fibroblasts. Cancer Res. 65:11156-63, 2005.