ドクター通信

131 米国癌学会2008のトピックスから -その2-

01

May

今年の4月12-16日に、サンディエゴで開催された米国癌学会(AACR2008)で出ていた話題から、がん免疫療法関係について、-その1- に続けてお届けします。
  REFERENCEは、abstract CD-ROMからの引用です。ただし、シンポジウム (#SY番号のシリーズ)ではabstractを提出していないという例が多数あ りました。

(3) 非小細胞性肺がんでもがん組織中のMemory T cells (CD45RO-high)陽性の患者の方が長生きする

 -その1-に記載した(1)の胃癌、食道癌の場合と同様に、非小細胞性肺がん組織中のMemory T cells (CD45RO-high)陽性の患者の方が、CD45RO-lowの患者よりも長生きす(p<0.00....1)というものです(Ref. 1)。

 しかもrelapse tumorではfoxp3+の制御性T細胞(Treg)は特に増えていないそうです。

 J. Clin. Oncol. in press.とスライド表示されていましたので、まもなく出版されることと思います。

 大腸癌(Galon J et al. Science 313: 1960-1964, 2006)に続いて、これだけの癌種で、がん局所へのリンパ球浸潤が予後を占うとなりますと、どの癌でもあり得る一般的反応だと推定され、がん治療においても生体防御機構の保全・活性化は非常に重要だと思われます。

(4) がんワクチンの投与後に抗CTLA-4抗体を投与すると明瞭ながん縮小効果がある

 T細胞表面のCTLA-4分子が標的がん細胞のB-7分子と結合したとき、活性化を抑えるネガティブシグナルがT細胞内に発信されますが、抗CTLA-4抗体(= ipilimumab)は、この結合を阻害することによって、抗原とT細胞レセプターの結合を通じたT細胞の活性化状態を維持します。

 Dana-Farber Cancer InstituteのDranoffは、GM-CSF geneを仕込んだX線照射がん細胞ワクチンGVAX投与後に抗CTLA-4抗体を投与すると、大部分の症例で明瞭ながん縮小効果があることを、ステージIVのメラノーマで提示しています(Ref. 2)。

 彼らは、すでに670例に実施しており、2009年にはsurvivalデータが出る予定とのことです。

 一方、昨日(4月30日)のBiotechnology Japanのニュース欄<http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2008043054830>に、米Medarex社と米Bristol-Myers Squibb社が、抗CTLA-4抗体薬剤「ipilimumab」の生物製剤認可申請(BLA)を09年以降に延期することにしたと出ています。

 この発表は、FDAとの協議の結果、2009年に出る見込みのsurvivalデータを待つことにしたものによると思われます。

 従来、メラノーマでは、NCIのRosenbergのグループの全身リンパ球置換法を除いて、各種のがんワクチンではほとんどobjective responseが出ていなかっただけに、もしFDAが来年、「GVAX+抗CTLA-4抗体」治療を認可すると、この影響は非常に大きいと思われます。

 ただし、抗CTLA-4抗体を血中に投与すると強い副作用が出ます。特に問題になりそうなのが、自己免疫疾患様症状の多発で、これをコントロールできるかが、次の課題となるでしょう。

 (注:当社の自家がんワクチンは、これまで既に700例を越える投与経験がありますが、単独投与では、自己免疫疾患様症状を示した報告は1例もありません。)

REFERENCE

1. #SY03-02 Shaping of an efficient immune microenvironment in human cancer. Wolf H. Fridman, Unite INSERM, Paris, France

2. #SY03-04 Balancing tumor immunity and inflammatory pathology. Glenn Dranoff. Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA.