ドクター通信
130 米国癌学会2008のトピックスから -その1-
30
Apr
今年の4月12-16日に、サンディエゴで開催された米国癌学会(AACR2008)で出ていた話題から、がん免疫療法関係についてお届けしま す。
(1) がん組織中にメモリーT細胞が蓄積している患者ほど長生きしている
これは、日本の奈良医科大からの報告です。胃がんについてもポスター発表していましたが、食道がんでは、がん組織中にCD45RO+hiのリンパ球が蓄積している症例では、CD45RO+loの症例に比べ、1年生存率が 86.7% vs 70%、3年生存率が 64.8% vs 30.8%、5年生存率54.1% vs 30.8%で P=0.036 となったとのことです。
がん組織中に細胞性免疫反応の形跡があるほうが経過が良い、というこの結果は、ドクター通信 from セルメディシン No. 75でお伝えしました「大腸がん-病理診断よりも免疫細胞集積の方が予後を占う」(Ref.3)という点と趣旨は同じです。
(2) "Cancer Immunoediting"には3つのフェーズがある
弊社からの「セルメディシンニュースNo.32 (2005.4.27)」に2005年の米国癌学会のトピックスの記事(以下)があり、Immunoeditingについて述べています。
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第2のトピックスは、これまでに盛んに開発されてきたペプチドワクチン療法の問題点が指摘されたことです。特定のがん抗原ペプチドを投与して、それに反応する抗体やキラー細胞を体内で誘導し、がん細胞を殺そうという治療法ですが、投与されたがん抗原ペプチドと同じがん抗原ペプチドを発現しているがん細胞は殺されますが、同じがん抗原ペプチドを発現していないがん細胞は殺されずに野放し状態になり、かえって良くない結果をもたらす、というものです。
丁度、同じ現象が乳癌で採用されているハーセプチンという抗体療法でも起こります。ハーセプチンはHer2/neuという抗原を発現している乳がん細胞を殺しますが、同じ乳がん細胞群のなかに、Her2/neu抗原を発現していない細胞がいると、結果的にその乳がん細胞を放置し育ててし
まうことになります。これが、約半年程度しかハーセプチンが効かないといわれる理由だそうです。
これらの現象には、Immunoediting(免疫編集)という用語が当てられました。
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今回、R. D. Schreiberが指摘したのは、Immunoeditingには3つのフェーズが考えられるという点です(Ref. 4)。
Elimination - the host-protective phase comparable to cancer immunosurveillance;
Equilibrium - a phase where residual tumor cells circumventing elimination may persist in the host and undergo immunologic sculpting;
Escape - the phase in which immunity can no longer restrain tumor growth permitting emergence of clinically-apparent, progressively-growing tumors.
この際、methylcholanthrene (MCA)でがんを発生させるとき、200日以上も発ガンしていない"tumor free mice" を選び、adaptive and/or innate immunity担当細胞を抗体等で除去しますと、一挙に約半数のマウスが発ガンすること、しかも、これらキラー細胞を戻すとがん増殖が制
御できることから、equilibriumフェーズの存在を証明しています。
つまり、equilibriumフェーズにいるがんはまだ免疫的に感受性があるのですが、tumor cells that spontaneously advanced from equilibrium to escape showed attenuated immunogenicity と述べています。
この新学説は、通常はがん免疫反応が働いており、最終的に変異する前(Editing of tumor cells occurs at the interface of the equilibrium and escape phases.)までなら、がん免疫反応の強化でがん組織形成はコントロールできる可能性を示していますが、末期で急速にがん組織が大きくなるescapeフェーズでは、大部分のがん細胞が低抗原性に変異しており免疫反応ではもはや治療できないことを示唆しています。
当社の場合、これまで"スローな癌こそワクチンで"、"余命3ヶ月以下では自家がんワクチン療法では無理"と言ってきましたが、おおまかには「escapeフェーズに入る前にワクチン療法をすべきだ」ということに当てはまりそうです。
REFERENCES
1.ポスター#262 Prognostic significance of CD45RO+ memory T cell in human gastric cancer. Kohei Wakatsuki, et al. Nara Medical University, Nara, Japan
2.ポスター#263 Clinical significance of CD45RO+ memory T cell in human esophageal cancer. Koji Enomoto, et al. Nara Medical University, Nara, Japan
3. Galon J et al. (2006) Type, density, and location of immune cells within human colorectal tumors predict clinical outcome. Science 313: 1960?1964
4.#SY03-01 Cancer immunoediting: Immunologic control and sculpting of developing tumors. Robert D. Schreiber. Washington Univ. School of Medicine, St. Louis, MO.








