ドクター通信
121 T細胞の細胞内分化決定因子
12
Feb
T細胞は、骨髄造血幹細胞が胸腺に移動して分化して作られてきますが、胸腺内では未熟なダブルネガティブ胸腺細胞(CD3-CD4-CD8-)から未熟なダブルポジティブ前駆細胞(D3+CD4+CD8+)を経てヘルパー型(CD3+CD4+CD8-)かキラー型(CD3+CD4-CD8+)のT細胞に分化します。
このヘルパー型とキラー型への分かれ道は、細胞内ではどんな分子によって制御されているかが不明でしたが、このほど、理化学研究所・アレルギー科学総合研究センターの免疫転写制御研究チームが、遺伝子組み換えマウス実験で、前駆細胞をヘルパーT細胞へ分化させる働きをする
Th-POK遺伝子(ヘルパーT細胞分化のマスター転写因子を作る遺伝子)に、Runxという転写因子が結合して、Th-POK遺伝子の発現を抑制しキラーT細胞に誘導しているためだということを発見しました(Ref. 1)。
RunxはT細胞でのIL-4産生を抑制している転写因子でもあり、少なくとも3種類あることが知られています。また、"Runx1は主に造血幹細胞に発現し、急性骨髄性白血病の原因遺伝子の1つとして、一方Runx2は骨芽細胞に発現し鎖骨頭蓋異形成症との関連において、またRunx3は消化管粘膜上皮細胞に発現し、胃ガンの抑制遺伝子として、遺伝子の異常と疾患との関連が報告されており、Runxファミリー転写因子は、細胞の発生・分化過程において極めて重要な役割を持つと考えられている"(Ref. 2)とされています。
今後、急速に転写因子の発現を修飾する化合物(すなわち免疫調節用の新薬候補)の探索が進むものと推測されます。
REFERENCES
1.Ruka Setoguchi, Masashi Tachibana, Yoshinori Naoe, Sawako Muroi, Kaori Akiyama, Chieko Tezuka, Tsukasa Okuda, and Ichiro Taniuchi:
Repression of the Transcription Factor Th-POK by Runx Complexes in Cytotoxic T Cell Development. Science, Feb 2008; 319: 822 - 825.
解説 → http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080208_2/detail.html
2.西村 美香:転写因子Runx3の末梢神経発生における機能解析、つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200601200200767
出典 → http://www.biol.tsukuba.ac.jp/tjb/Vol5No1/TJB200601200200767.html








