ドクター通信

112 サイトカインの争奪戦

29

Nov

(1) サイトカインの争奪戦

 いわゆる制御性T細胞(CD4+CD25+Foxp3+ T cell = Treg)がどのようにして細胞性免疫反応を抑制するのかという点については議論のあるところですが、このほどメカニズムの一つが解明されました(Ref.1)。

 Treg自身は他のT細胞と異なりIL-2を産生しません。しかし、生存増殖のためにはIL-2が必須です。Tregの抑制を受けるresponder側のT細胞はIL-2の産生能力がありますが、同じく、生存増殖のためにはIL-2が必須です。Tregが液中に放出されたIL-2を奪うためresponder T cellが増殖できないのだ、ということだけならば理解しやすいのですが、ことはそう単純ではありません。

 Tregを他のT細胞と同一培養液内において孔のある膜(IL-2は通過できるが細胞は通過できない孔サイズ)で両者を分離しておくと、1日程度の短時間ではresponder T cellの増殖を全く抑制しませんので、活性抑制のためには両細胞間の直接接着が必要なことがわかります。しかし接着時にどのような分子メカニズムが働くのかは不明でした。

 両細胞を直接接着させますと、当初の1日ではTregはresponder T cellの分裂を抑制しませんが、3日以上たつとresponder T cellのアポトーシスを誘導しほとんど殺してしまいます。

 このとき、perfolin欠損マウス由来のTregも、Fasリガンド欠損マウス由来のTregも、TNFやgranzymeの阻害剤を加えても、同じようにresponder T cellのアポトーシスを誘導することから、既知のメカニズムとは異なるメカニズムでアポトーシスを誘導していることが分かりました。

 明らかになったのは、Tregは生存増殖のためだけではなく、直接接触によるresponder T cellの活性阻害にもIL-2等のサイトカインを必要とし、他にIL-4, IL-7, IL-15等も消費しつくすために、長時間たつとresponder T cellはサイトカイン不足により、自己活性化用のサイトカイン生産(positive feed-back)も働かなくなり、結局アポトーシスを
起こすということでした。

 まさに、Treg作用の現場では、サイトカインの争奪戦が起こっていたのです。

 養子免疫療法の際、in vitroで増殖活性化したリンパ球だけを投与したのではほとんどがん治療効果がないが、大量のIL-2を同時投与すれば効果が見られるというのは、メラノーマに対するRosenbergらの一連の臨床研究でよく知られているところですが、今回の報告はこの裏づけになると思われます。