ドクター通信

088 死せるがん細胞由来のオンコジーンによる"remote oncogenesis"

11

Apr

今週到着したNature Clinical Practice Oncologyに、「化学療法後に劇的な腫瘍縮小が認められたのに患者の生存率が延びないのは何故か」という議論が載っています(Ref.1)。

 特にこの現象は乳がんが転移した場合のmyeloablative chometherapy後に顕著ですが、(1)少数のchemo-resistantな乳がん細胞がどこかに生き残っているためだ、(2)乳がんのcancer stem cellがchemo-resistantなのだ、と説明されてきました。

 しかし、これでは、大量化療でがん細胞数が激減した症例と、未だ大量にがん細胞が生き残っている症例との間にある差がなぜなくなるのか、説明できません。

 そこで、(3)残存腫瘍が小さい程、生残がん細胞の増殖スピードが速くなるのだ、がん細胞を完全に殺しきらない限りがんは治らない、という説明がなされています。
 
 では、第4の説明が可能か、というのが本題です。

 化療後には血中にがん細胞由来のDNAが大量に流れていることが知られていることから、(4)この中のオンコジーンがde novo carcinogenesisを遠隔部位で起こすのだ("remote oncogenesis")、という仮説を展開しています。

 この論拠として、骨髄に転移したsolitary micro-metastatic viable cellsのDNA profileを見ると"strikingly heterogeneous"であること、その根源となったはずのprimary tumorからかけ離れたパターンを示すことを上げています。

 はたしてそうでしょうか。

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 おそらくは、患者の基礎免疫力(ナチュラルキラー細胞に代表されるような)を大量化療で徹底的に破壊してしまうがゆえに、単に生残がん細胞の猛スピード増殖を許してしまうにすぎない、というメカニズムではないかと筆者は考えています。

 今後の検証が待たれるところですが、いずれにしても、大量化療でがん細胞数を激減させても無意味だ、ということになります。


REFERENCE

1. Mittra, I.: The disconnection between tumor response and survival. Nature Clin. Proct. Oncol. 4(4): 203, 2007.