ドクター通信

082 新型T細胞:Th17 -- ヘルパーT細胞群は複雑、Th1・Th2だけでは

05

Mar

Nature Medicine 2月号に新型のT細胞:Th17の総説論文がでています。

 ヘルパーT細胞には、同じCD4分子を細胞表面に発現していながらも、Th1とTh2の2種があり、それぞれ異なる
サイトカインを産生します。従来は、Th1は細胞性免疫の前線を担うキラーT細胞を刺激し、Th2は液性免疫を担
うB細胞を刺激するという、Th1-Th2仮説が強く支持されてきました。

 しかし、ヘルパーT細胞と同じCD4分子を表面に発現する制御性T細胞(Treg)が登場して以来、T細胞サブセ
ット群は複雑な構成であることがわかり、さらに最近Th17が登場してきたのです。

 自己免疫疾患で組織傷害を起こすのは、過去20年以上にわたりTh1の刺激を受けたCD8 T細胞(killer)と考え
られてきましたが、このTh17 T細胞はIL-17を産生し、それが、脳、関節、心筋、肺、小腸における各種の自己
免疫疾患を悪化させることから、実は、Th17が自己免疫疾患で組織傷害を起こす主役と考えられています。IL-
17産生能を欠くマウスでは関節炎やアレルギーの誘導が強く抑制され、心筋炎を誘導するのはIL-7産生細胞であ
ることが証明されています。これら以外にも山のような論文が提出されてきています。

 厄介なのは、Th1がその産生IFNgを介してTh17を抑制すること、しかし同じTh1が産生するTNFはTh17を刺激し
、Th2から出るIL-4はTh17を抑制するがIL-6はTh17を刺激するという非常にややこしい関係があることです。こ
の他にも、TGFbとIL-23はTh17を刺激し、IL-27(IL-12のfamily分子)は抑制するという点もあり、これらの相
互関係は、この総説のFig. 1に整理されて示されています。

 とはいえ、この総説の著者がいうように、一つのT細胞から産生される一つのサイトカインは一つの役割しか
ないという単純なものではなく、おそらくは多数のT細胞のサブセット群が産生する各種のサイトカインが、ま
るでオーケストラを奏でるように炎症反応において作動していると想定するほうが現実的かもしれません。

 これらT細胞サブセット群とそこから産生されるサイトカイン群のがん疾患における役割は今後急速に解明さ
れていくだろうと思われますが、がんそのものが単純ではないだけに、自己免疫疾患の場合以上にさらに一層複
雑な形で出現してくるだろうと思われ、注目に値します。


REFERENCE

1. Lawrence Steinman:A brief history of TH17, the first major revision in the TH1/TH2 hypothesis of
T cell-mediated tissue damage. Nature Medicine, 13(2), 139 - 145, 2007. doi:10.1038/nm1551