ドクター通信
084 CTLA-4の阻害--がん治療と自己免疫疾患の微妙なバランス
12
Mar
今週到着した米国国立がん研究所(NCI)からのミニ総説論文に、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の活性を抑える分子CTLA-4を逆に抑えて、CTLの傷害活性を強化するがん免疫療法が紹介されています。
CTLの活性化には、抗原提示細胞のMHC-class I分子上に提示された腫瘍抗原ペプチドによるT細胞側のT-cell receptorの刺激だけでは弱く、T細胞上のCD28分子が抗原提示細胞上のco-stimulatory molecule(B7分子)に結合し、T細胞--抗原提示細胞間の結合を強化することがキーポイントになっています。
ところが、T細胞側の活性化が始まって2-3日もするとT細胞上にCTLA-4分子が発現するようになり、これが相手側のB7分子と優先的に結合し、T細胞の活性化を阻害するようになります。
この反応は、細胞性免疫反応の行き過ぎをシャットダウンする意味で生理的には重要なのですが、逆にCTLA-4分子を抗体で阻害してやれば、強い細胞性免疫反応が持続すると期待できます。
CTLA-4阻害抗体(ipilimumab)を用いたがん治療(anti-CTLA-4 mono-therapy)は、すでに臨床試験で行われておりましたが、自己免疫疾患の多発が問題でした(2)。同時に、腫瘍局所で制御性T細胞(Treg)の増殖も刺激してしまうため、がん治療効果は期待したほどではなかったものです。
しかし、anti-CTLA-4 monotherapyにがんワクチンを併用すると、動物実験ではがん細胞を殺す方向に働くエフェクターT細胞(Teff)がTregよりも多くなり、しかも、Teffのがん細胞に対するavidityがはるかに上昇するとされています(3)。
実際に臨床で、前立腺癌にこの併用療法が試された結果、3例中2例でPSA値が50%以下に低下しています(1)が、その2例では、明瞭な自己免疫疾患様の症状が発生しています。また、GM-CSFを産生させるように遺伝子改変したallogeneicながん細胞を用いるGVAXワクチンとの併用も試されています。この場合は6例中5例でPSA値が半減していますが、やはりレスポンスした症例では自己免疫疾患が発生しています。
これらのがん治療効果が出てくるのは、いずれも治療開始3-4ヶ月後からで、丁度、自己免疫疾患の発生する時期でもあります。
それでも、anti-CTLA-4抗体とワクチンの併用は臨床的意義があるのではないか、というのが総説の著者らの意見ですが、自己免疫疾患とバランスは極めて微妙です。
さて、読者の皆様はいかがお考えでしょうか?
少なくとも「自家がんワクチン療法」のみでは、自己免疫疾患の発生報告は累積500例を越えた現在でも、1例もありません。
REFERENCE
1. James L Gulley and William L Dahut: Future directions in tumorimmunotherapy:CTLA4 blockade. Nature Clin. Practice Oncol. 4(3): 136-137, 2007
2. Dilnawaz Kapadia, Lawrence Fong: CTLA-4 Blockade: Autoimmunity As Treatment. J Clin Oncol, 23: 8926-8928, 2005.
3. James W. Hodge, Mala Chakraborty, Chie Kudo-Saito, Charlie T. Garnett, and Jeffrey Schlom: Multiple Costimulatory Modalities Enhance CTL Avidity. J. Immunol., May 2005; 174: 5994 - 6004.








