ドクター通信

081 がん特定研究合同シンポジウムから

23

Feb

昨日から(2月22-23日の予定)、東京大手町で「平成18年度 文部科学省 がん特定研究合同シンポジウム」が開催されております。

 その中の話題の一つ、「ペプチドワクチン研究から見えるがんワクチン療法の将来」(久留米大・免疫・伊東恭悟)では、がん抗原ペプチド投与後にがん組織中へのメモリーT細胞(CD45RO+ T)の浸潤が見られることが重要だとの発表がありました。

 この発表で注目されたのは、膵臓がんに対し、ペプチドワクチンにゲムシタビン(1000mg/m^2、骨髄抑制が起こるとの注意書きがある用量)を併用投与していることでした。通常、化学療法ではリンパ球増殖が強く抑制され、その結果として免疫抑制作用が強く出てくるため、がん免疫療法を実施する場合は、化学療法を同時併用することは避けるべきだとされています。

 このグループは、従前より進行性再燃前立腺癌の症例に「ペプチドワクチン+エストラムスチン(常用量の半量)」を試し、PSAの顕著な低下効果を示しておりましたが、エストラムスチンを常用量で投与したのでは、やはり強い免疫抑制作用があるため、半量に落としていたものです。

 今回の膵臓がんに関しては、ペプチドワクチンに併用するゲムシタビンのドーズレスポンスを取っており、その結果やはりフルドーズが良い結果であったとのことです。シンポジウムであったため、詳細な点までは示されませんでしたが、「がん免疫療法と化学療法は、場合によっては同時併用可能だ」ということを示唆しています。

 それにしてもフルドーズを同時併用しているとは、さすがに筆者も驚いています。ゲムシタビンによる白血球減少の副作用はフルドーズでは30.8%もあります(1)。しかし、そのうちでグレード3以上の白血球減少は2.4%と少ないため、今回の発表では、この副作用の出ない状況で行われたものと考えられます。

 なお、久留米大のペプチドワクチンでは、患者のHLAサブタイプに合わせた4種類のがん抗原ペプチドを組み合わせて投与していますが、弊社では、同一種類のがんであっても患者個々人でがん抗原発現パターンは大きく異なると考えられるため、4種類のがん抗原ペプチドを用いてもなお、エスケープするがん細胞クローンが発生しやすいだろうと推定しております。

 その点では、「自家がんワクチン」は、患者自身の摘出がん組織そのものを抗原に使いますので、理論的にはそのがん組織に内在するすべてのがん抗原が含まれ、エスケープするがん細胞クローンが発生しにくいはずと考えております。

 また、当社の「自家がんワクチン」とタキソール(40mg/day)の時差併用で、乳がん骨転移が激減した症例も出ております。
 → http://www.cell-medicine.com/cases/report/nyugan.htmlに画像を掲載。

 将来的には、ペプチドワクチンと「自家がんワクチン」を併用することも視野に入れて、今後も臨床データを蓄積していくことが重要と思われます。

REFERENCE

1. Oettle H, Post S, Neuhaus P, Gellert K, Langrehr J, Ridwelski K, Schramm H, Fahlke J, Zuelke C, Burkart C, Gutberlet K, Kettner E, Schmalenberg H, Weigang-Koehler K, Bechstein WO, NiedergethmannM, Schmidt-Wolf I, Roll L, Doerken B, Riess H. Adjuvant chemotherapy with gemcitabine vs observation in patientsundergoing curative-intent resection of pancreatic cancer: a randomized controlled trial.
JAMA. 2007 Jan 17;297(3):267-77