ドクター通信

077 樹状細胞へのタンパク"ペインティング"

19

Jan

単一のがん抗原ペプチドを樹状細胞(DC)に負荷してDCワクチンとするがんワクチン療法は、担がん個体に投与しても、ほとんど臨床効果がないという残念な結果が報告されています。

 それならばと、負荷するがん抗原ペプチドの種類を増やしたり、がん抗原ペプチドの発生源であるmRNA、cDNAのDCへの導入、がん抗原タンパク、腫瘍組織ライセートをDCに負荷する努力、はてはDCとがん細胞自体を融合してしまう方法まで開発されていますが、技術的に簡単ではないため、長い準備期間がかかり、その割には明快な臨床効果を得られず、広く普及するにはいたっていないのが現状です。

 Liuら(1)は、このうち複数のがん抗原を負荷する考え方を発展させ、一度に3種類のがん抗原タンパクを簡単にDCに負荷する方法を開発、効率よく細胞性免疫反応を活性化する方法をマウス実験で示しました。

 キーポイントは、protein Aにパルミチン酸を共有結合させると、その分子は細胞膜にすみやかに沈着結合しますが、このprotein Aには抗体のFcγ1部分が強く結合します。そこで、Fcγ1部分と融合したタンパクをあらかじめ準備しておけば、DCにサッと負荷できてしまう点にあります。

 これなら、臨床でもDCを調製さえすれば、すぐに何種類でも抗原タンパクを簡単に負荷できますから、DCワクチンとしては使いやすいというわけです。

 彼らはこの方法を、タンパクお絵かき(protein painting)法と名づけました。命名は開発者の特典ですから、ずいぶん研究を楽しんでいる雰囲気が伝わってきます。
 
 さて、この方法ではたして臨床効果が期待できるでしょうか。ヒトで繰り返して使うと、protein AがStaphylococcus由来の異種タンパクですから、トラブルを起こしそうに思うのは筆者だけでしょうか?どうやら一発勝負用DCワクチンとなりそうです。


REFERENCE

1. Shanrong Liu, Barbara A. Foster, Tie Chen, Guoxing Zheng and Aoshuang Chen:Modifying Dendritic Cells via Protein Transfer for Antitumor Therapeutics. ClinCancer Res 13, 283-291, January 1, 2007.