ドクター通信

074 全身リンパ球交換療法

20

Dec

Nature Clinical Practice ONCOLOGYの今月号に米国NIHのRosenbergのグループが(Ref. 1)の総説を書いています。

 彼らは、cyclophosphamideとfludarabineを用い、lymphodepletingでnonmyeloablativeな状態(リンパ球数は17個/μlまで低下)を患者に作り出し、体外で大量培養したtumor infiltrating lymphocytes(TIL; 実際にはalloのfeeder cellsとOKT3抗体とIL-2で活性化したキラーT細胞を含んでいる)と大量のIL-2投与を行う方法により、難治性のメラノーマで画像診断で奏効率51%を達成しています。いわば"全身リンパ球交換療法"による大ホームランを打ったといえるでしょう。

 この先、どうするかを議論したのがこの総説論文です。

 "全身リンパ球交換療法"では、あらかじめ抗がん剤で制御性T細胞(Treg)をほとんど殺してしまうのがキーポイントになっています。この論文では、これを更に進め、ナチュラルキラー細胞も含めて他のリンパ球も全部殺してしまうという"more profound lymphoablative conditioning with autologous stem cell resque"を提唱しています。

 この考え方は、「(全身照射または大容量化学療法)+自家造血幹細胞移植による蘇生」と同じ戦略パターンですが、体外培養キラーリンパ球の大量移入を伴う点が違います。しかも、profound lymphoablative conditioningからさらにmyeloablative conditioningにまで進むなら、必然的に「他家造血幹細胞移植+他家キラーリンパ球移植」も視野に入ってきます。(ここまでくればいわゆる"ミニ移植"によく似てきますね。)

 さらに踏み込んで、他家リンパ球に(もちろん自家リンパ球でもいいのです)、患者のがん抗原を認識するT細胞レセプター遺伝子を組み込み、自家がん細胞に特異的に反応するキラーT細胞に仕立て上げて治療に使うことも考えられます。この研究は臨床ですでに検討されています。

 それならば、あらかじめこのような他家遺伝子組み換えキラーT細胞を大量に準備しておけばよい、つまり大量生産医薬品と同じ考え方で、ひょいと棚からおろして処方できるということになります。

 いや、なにも将来にわたってヒト細胞にこだわることはない、異種動物の遺伝子組み換えキラーT細胞を準備しておいてもいいはずでは、、、、、、、都合が悪くなったら自家造血幹細胞で助ければいい、、、、。

 とここまでくると、さて、読者の皆様はいかがお考えになりますでしょうか?


REFERENCES

1. Muranski P, Boni A, Wrzesinski C, Citrin DE, Rosenberg SA, Childs R, Restifo NP. Increased instensity lymphodepletion and adoptive immunotherapy -- how far can we go?
Nat Clin Practice Oncol 3:668-681, 2006.