ドクター通信

069 TGF-betaをターゲットにした脳腫瘍の遺伝子治療ワクチン

16

Nov

脳腫瘍でgrade IVのglioblastomaは難治性の最たるものの一つですが、この腫瘍細胞はTGF-betaを産生することで知られ、TGF-betaは免疫能を強く抑制します。

 そこで、この産生を抑制すればglioblastoma治療につながるはずだと動物実験の結果から推測されておりました(1)。また、患者血中のlatent TGF-beta2は、手術前で高く、手術後に明瞭に減少します(2)。しかも、手術前後の差が6ng/ml超となるか以下となるかが生存期間に強く相関することも知られています(2)。

 本日到着したメールニュースでは、TGF-beta2アンチセンスベクターを導入した自家腫瘍細胞をワクチンとしたPhase I試験の結果が報告されております(3)。WHO grade IV astrocytoma*(*原文のまま) 6例を対象に、500~2000万個(1回あたり)を2~7回皮下注射した結果、PRが2例、SDが2例出ており、overall median survivalが68週となったそうです(これだけの少数例で計算するのは荒っぽすぎますが)。執筆者らによればhistorical controlでは47週だそうですから、MSTが4.9ヶ月伸びたということになります。

 腫瘍細胞による免疫抑制作用を逆に抑制してやれば、かなり期待できる結果をもたらすというこの報告は、がん治療のためには免疫機能の維持亢進が重要であることを示唆しております。


REFERENCES

1. Wick W, Naumann U, Weller M. : Transforming growth factor-beta: a molecular target for the future therapy of glioblastoma.
Curr Pharm Des. 2006;12(3):341-9. (Review)

2. Schneider T, Sailer M, Ansorge S, Firsching R, Reinhold D. :
Increased concentrations of transforming growth factor beta1 and beta2 in the plasma of patients with glioblastoma.
J Neurooncol. 2006 Aug;79(1):61-5.

3. H Fakhrai, J C Mantil, L Liu, G L Nicholson, C S Murphy-Satter, J Ruppert and D L Shawler : Phase I clinical trial of a TGF- antisense-modified tumor cell vaccine in patients with advanced glioma.
Cancer Gene Ther 2006 13: 1052-1060; advance online publication, July 7, 2006; 10.1038/sj.cgt.7700975