ドクター通信
052 胸腺の皮質・髄質のストローマ細胞--相反する機能を持つストローマ細胞は実は同じ前駆細胞由来だった
22
Jun
骨髄由来のリンパ球前駆細胞がT細胞になるには、胸腺で分化成熟する必要がありますが、そのときの養育係になるのが、胸腺中にある上皮細胞様のストローマ細胞(間質細胞、thymic epitherial cells)です。
皮質のストローマ細胞(Foxn1遺伝子を発現する)は抗原反応性を持つT細胞を選択的に増やし(positive selection)外敵を防ぎますが、髄質のストローマ細胞は自己抗原反応性を持つT細胞を選択的に殺し(negative selection)、自己免疫疾患になるのを防ぎます。
このような相反する機能を持つストローマ細胞の由来はこれまで不明でしたが、本日発行のNatureに、実は同じ前駆細胞由来だったという論文が2報出ました。
それぞれの論文では、1個の蛍光ラベルした前駆細胞候補が皮質と髄質のストローマ細胞になった(1)、あるいは、1個の前駆細胞候補のFoxn1遺伝子を活性化すると皮質と髄質が発生した(2)、という証明をしています。
しかも、この共通前駆細胞は、胎児期のみならず、誕生後もあるというのです。
このことは、共通前駆細胞をうまく使えば、T細胞性の免疫力が極端に低下した患者さんでも免疫力を回復させる手段になる、すなわち従来にはない全く新しいタイプの細胞医薬を作り得るということを示しています。
すぐに実現できるとは思われませんが、将来の楽しみですね。
REFERENCES
1. Simona W. Rossi, William E. Jenkinson, Graham Anderson and Eric J. Jenkinson:Clonal analysis reveals a common progenitor for thymic cortical and medullary epithelium. Nature 441, 988-991 (22 June 2006)
2. Conrad C. Bleul, Tatiana Corbeaux, Alexander Reuter, Paul Fisch, Jurgen Schulte Monting and Thomas Boehm:Formation of a functional thymus initiated by a postnatal epithelial progenitor cell. Nature 441, 992-996 (22 June 2006)








