ドクター通信
035 がん治療の薬剤もデザイナーコンビネーションの時代へ
27
Feb
薬剤の効果を上げる目的で様々な薬剤を併用する試みは一般的に行われております。抗がん剤などはその典型であるでしょうし、ある意味では、葛根湯などの漢方薬は長い経験から体系化された、組合わせの妙といえるかもしれません。
しかし、分子レベルで組み合せを精密に予想し、特定の疾患に効果的な組み合せを見つけるのは困難ですが、Rubinfieldらはユニークな方法でこの組み合せを見つける方法を報告しております(1、2)。
ヒト大腸がんの抗がん剤であるCPT-11と併用し、効果的であると予想される薬剤を分子レベルで見つけ出し、実験モデルで効果を確認しました。その方法とは、CPT-11投与により癌細胞の細胞膜に特異的に発現する分子を特定し、それに対する抗体医薬を処理することにより劇的な効果を上げるという方法です。
彼らはヌードマウスにヒト大腸がん細胞を植え、2週間ほど育てた後、CPT-11を投与します。このときの投与量は生体に毒性がない状態、しかも腫瘍組織にダメージを与えない程度にしておきます(ここがキーポイントでしょう!)。
その後、腫瘍組織を回収し、マイクロアレイでmRNAを網羅的に解析し、対照群(生理食塩水)と比較して、CPT-11処理で強く安定的に細胞膜に発現するタンパクをスクリーニングし、ある細胞膜抗原を見つけました。
その分子は他の大腸がん細胞でも同様に発現されること、正常な腸にはないことも確認した上で、その分子に対する抗体医薬を作ります。
モデルマウスで検討した段階では、CPT-11、抗体医薬各々単独では効果が出ないのですが、CPT-11処理後に抗体医薬を投与することで劇的に腫瘍が縮小、消失したのです。
これはそれぞれの薬剤単独ではまったく効果がなくても、併用することで劇的な効果を発揮するという理想的な組み合わせを、分子レベルでデザインできたことを示唆しています。
このようなデザイン化は、今後、細胞性免疫反応の取り込み等を含め、今現在使用されている薬剤を有効に活用し、併用する組合わせの妙をみつける新しい方法になるかもしれません。
REFERENCES
1. David Lane: Designer combination therapy for cancer.
Nature Biotechnol 24, 163-164, 2006.
2. Bonnee Rubinfeld, Archana Upadhyay, Suzanna L Clark, Sharon E Fong, Victoria Smith, Hartmut Koeppen, Sarajane Ross, and Paul Polakis: Identification and immunotherapeutic targeting of antigens induced by chemotherapy. Nature Biotechnol 24, 205-209, 2006.








