ドクター通信
032 COX2阻害剤はがんワクチンと併用効果を示す
06
Feb
がんの予防に関しては様々な報告がありますが、気軽にできる習慣として普段の食事で行えるのは理想的です。しかし、これに関してもしっかりとしたエビデンスがあるものはほとんどないのが現状です。例えば、食物繊維は便通をよくすることで発がん物質の排せつにつながり、大腸がんを予防できるとの報告がなされてきましたが、昨年末には、米国ハーバード大学などの研究グループが、これまで明らかになった72万人の結果を分析したところ、食物繊維を多く取っても大腸がんの発症率は変わらなかったと発表しました。
→ http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/kenkou/pickup/420225
食物繊維効果については、まだ異論のあるところとは思いますが、他に有効な方法はないのでしょうか?
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がそれにあたるかもしれません。この薬剤の一種は、シクロオキシゲナーゼ2(COX2)を阻害して炎症を抑えるのですが、この薬は意外にもがん予防作用があることが報告されています。
この研究はアスピリンを週二回以上飲んでいる人は大腸がんの発症率が低くなるという報告に始まったものです。臨床試験も進められています。
→ http://www.nci.nih.gov/search/ResultsClinicalTrialsAdvanced.aspx?protocolsearchid=2078129
なぜ予防効果を発揮するのかについては詳細不明です。大きな特徴として、多くの種類のがん細胞でこのCOX2という酵素が発現していることから、直接的にあるいは間接的に生体内のがん細胞の増殖に関わっていることが考えられています。
また、COX2によってプロスタグランジンE2が生成され、これが免疫システムを強く抑制することが知られています。プロスタグランジンE2は免疫システムのあらゆる場面(T細胞分化増殖、樹状細胞分化誘導)で抑制的に働くだけではなく、免疫抑制に関わる重要な細胞である制御性T細胞(Treg)の誘導にも働くと報告されております(1)。
また、Haasらはマウスを使った実験的がんワクチンモデルを用いて、COX2阻害剤ががんワクチンの効果を増強することを報告しております(2)。実験に使用されたのは、形成される小さな腫瘍ではがんワクチンが抑制効果を発揮するとはいえ、がんに対する効果的な細胞性免疫が誘導されているのにも関わらず、少し大きな腫瘍になると効果はないというモデルです。このとき、がんワクチンと同時にCOX2阻害剤入りの餌を与えたマウスでは、大きな腫瘍でも小さな腫瘍の場合と同じ抑制効果を観察しております。
そのマウスを調べてみるとがん特異的なキラーT細胞(CTL)がより多く誘導されており、腫瘍組織中へT細胞浸潤が多く、ヘルパーT細胞はTh1系にシフトしておりました。また、血管新生の促進をする因子も抑えられていました。
このようにCOX2阻害剤は生体自身ががんと戦いやすくする下地を作るようで、がんワクチン療法のような自分自身の免疫力を生かす治療法には馴染みやすいものであると考えられます。
REFERENCES
1. Sharma S, Yang SC, Zhu L, Reckamp K, Gardner B, Baratelli F, Huang M, Batra RK, Dubinett SM: Tumor cyclooxygenase-2/prostaglandin E2-dependent promotion
of FOXP3 expression and CD4+ CD25+ T regulatory cell activities in lung cancer. Cancer Res. 2005 Jun 15;65(12):5211-20.
2. Andrew R. Haas, Jing Sun, Anil Vachani, Africa F. Wallace, Michael Silverberg, Veena Kapoor, and Steven M. Albelda: Cycloxygenase-2 Inhibition Augments the Efficacy of a Cancer Vaccine. Clin Cancer Res 2006 12: 214-222.








