ドクター通信
028 がんは死してなお免疫を活性化
10
Jan
従前から樹状細胞(DC)を含む抗原提示細胞(APC)は、アポトーシスであれネクローシスであれ、死んだがん細胞を取り込み細胞内で消化してがん抗原をMHC-class Iとclass II上に提示することが知られておりましたが、死細胞自体に免疫アジュバント活性を持つものが含まれていることが最近判明してきました。
HMGB1(high-mobility group B1 protein)というタンパクは、脊椎動物の細胞核に豊富にありますが、ネクローシスした死細胞を貪食したDCは成熟し、細胞表面抗原が成熟型に変化します。しかし、HMGB1-/- cellsを作りネクローシスさせ貪食させても、APCは成熟しないというのです(1)。ネクローシスした死細胞(wild type)の上清でもDCの成熟は誘導できますが、この上清に抗HMGB1抗体を添加してHMGB1を除去しますと、やはりDCは成熟しません。
また、生きているがん細胞をマウスに注射する際にHMGB1タンパクを同時投与しますと、がん形成が強く抑制されますので、HMGB1タンパク自体がアジュバントになっていることがわかります(1)。
すでにChattergoonらは(2)、抗原遺伝子とFas遺伝子を搭載したプラスミドを同時にin vivo筋注すると、Fas分子発現によってアポトーシスを起こした筋細胞がDCに取り込まれ、所属リンパ節に移動、そこで抗原が提示され、抗原に対するcytotoxic T lymphocytes (CTL)がin vivoで効率よく誘導されることを観察しております。
がん細胞の場合であれば、何らかのがん抗原を持っているはずですから、遺伝子操作によるFas分子発現によらずとも、放射線や抗がん剤でアポトーシスを誘導するか、凍結療法や塞栓療法でネクローシスを起こさせれば、上記と同じ原理が働き、抗がんCTLが体内で誘導できるはずです。
しかし、実際には放射線等でアポトーシスを誘導しただけでは、体内の免疫系は十分に活性化するとはいえません。ここに、別途、自家がんワクチンを接種し、体内におけるCTL誘導にブースターをかける意義があります。
REFERENCES
1. Rovere-Querini, P., et al., HMGB1 is an endogenous immune adjuvant released by necrotic cells. EMBO reports 5, 8, 825?830 (2004)
2.Chattergoon, M. A., et al.: Targeted antigen delivery to antigen?presenting cells including dendritic cells by engineered Fas-mediated apoptosis. Nature Biotechnology 18, 974 - 979 (2000)








