ドクター通信
025 患者を含めた家族全員の病歴管理の勧め
09
Dec
個人の健康管理には誰でも高い関心を示しますが、意外にも家族全員の病歴を把握していることは少ないものです。故ジョン・F・ケネディ大統領の母は、大家族の病歴をそれぞれ1人分のカードに書き込んで保存していたため、駐英米国大使夫人であった時代にアメリカ的合理主義だと欧州社交界で感心されたという逸話が残っています。
現在はヒトゲノム解読が完了し、遺伝子上の単一DNA残基の変異(SNPs)の探索とその整理、疾病との関連づけ研究が盛んに行われております。そのため家族の病歴がしっかり記録されているファミリーツリーは、病原遺伝子群の探索や発症対策を考える上で宝の山となっており、アイスランドは国を挙げてその対策に取り組んでおります(国民の遺伝子を外国企業にセールスしているというマイナスの評判がたつくらい熱心です)。
アメリカ厚生省(US Department of Health & Human Services)ではUS Surgeon General's Family History Initiativeを立ち上げ、家族の病歴管理を推進してきました。しかし、当初のソフトは、特殊な基本ソフトをパソコンにインストールしていないと使えないものであったため普及阻害の原因になっていました。
アメリカ厚生省では、この程、これを改良したウエブ版を開発、公開しました。これならば特殊なソフトは必要なく、誰でも家族の病歴管理ができ、しかも入力データはアメリカではなく、手元のパソコンだけに残ります。(残念ながらまだ英語版とスペイン語版しかなく、日本からは使えませんが、内容を見ることはできます。)
→ https://familyhistory.hhs.gov/
このページには、ファミリーヘルスポートレート作成の目的が、
「When used in consultation with a doctor or a healthcare professional, My Family Health Portrait can be a valuable tool for assessing your risk for disease and identifying strategies to prevent disease.」
と明瞭に記載されております。
レポートの中では、心臓病、糖尿病の他、大腸がん、乳がん等の履歴を、両親、祖父母、兄弟姉妹、子供について記載する欄があり、家族の病歴の中で患者自身がいかなる位置にいるかが、簡単にわかるようになっております。
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11月12日開催のがんワクチン療法研究会では、自家がんワクチンの有効症例の発表が多数ありましたが、ワクチン投与後の経過観察が不十分なため、予後不明の症例が非常に多く残っております。理由は種々あるとは思いますが、患者様自身に、病歴を記録することの重要性が知識として浸透していないのも一因かと思います。
上記のアメリカの例に習い、がんの場合でも、患者様自身のみならずその家族の病歴を記録しておくことは将来的にも必ず役立つはずです。がんという重大な疾患をきっかけにすれば、「病歴を記録する」という習慣がきっと身に付くことでしょう。
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