がん種別の症例

乳がん

乳がんは初回手術後の患者様のうち、7~25年間で20%が再発することが知られています。一旦治ったように見えても要注意ですので、その対策は重要です。尾道総合病院では2011年4月にアメリカ癌学会で、「自家がんワクチン」は患者様の免疫能力を明瞭に高めることを発表しております。
  専門的な発表内容の抄録は → こちらです

2009年11月末時点までに自家がんワクチン療法を受診された乳がん症例のうち、経過報告があった症例についてソフトクライテリアの観点から評価した治療成績を以下の表とその下の代表的症例にまとめました。

評価済み症例のうちの改善例・無効例中69.8%で、臨床的に見てなんらかの改善効果(改善例 + 1年以上の長期不変・長期無増悪例)が見出されております。ソフトクライテリアは、学術的にみて厳密な評価基準(ハードクライテリア)とは異なるものですが、参考にしていただければ幸いです。

下表の改善率-1の定義は → こちらです

がん種 全症例数 評価済み症例数 改善例数 無効例数 改善率1 転帰不明追跡不能 改善率2 経過観察中 投与中止
改善 長期不変・無増悪 (1年以上) 無増悪 (6ヶ月以上1年未満) 無効 改善例数/(改善例数+無効例数) 転帰不明も 無効とした場合
158 136 9 51 7 19 69.8% 10 62.5% 37 3
注1)
評価済み症例数の計には投与中止例が含まれている
注2)
残存腫瘍サイズ縮小、腫瘍マーカー減少、推定余命より2倍以上の延命、QOL(KPS評価)の明らかな改善等の数値化できる指標のいずれか、または、
主治医の評価による何らかの臨床上の好ましい反応があった症例
注3)
長期不変・無増悪(ワクチン投与後1年以上無再発あるいは無増悪)
注4)
(評価済み症例数から、転帰不明追跡不能例、投与中止例を除いた数を分母にとったとき)
改善率1=改善例数/(改善例数+無効例数)
注5)
(転帰不明追跡不能を全例無効と仮定した場合)
改善率2=改善例数/(改善例数+無効例数+転帰不明追跡不能)
注6)
ワクチン投与後1年未満
注7)
悪化、死亡などによる未投与・投与未了例(評価済み症例の一部に含まれている)

代表的症例

〔症例0114〕 (文京クリニック)
ステージIIa、ER(-)、PgR(-)、HER2(-)、51歳だが、腋窩リンパ節19個中6個に転移があるため再発リスクが高いと診断された例。自家がんワクチン接種後1年経過時無再発。

〔症例0141〕 (尾道総合病院)
2004.08、術後抗がん剤CEF治療6クール終了後も肝転移あり。同年10月自家がんワクチン開始、05.03肝転移巣長期不変(SD)、しかし腫瘍マーカー上昇、その後通常よりも低い用量の化学療法(タキソテール40mg/日)を再開、腫瘍マーカーほぼ正常化、大型骨転移巣が激減、一部消失(下図)。

〔症例0153〕 (尾道総合病院)
2001.02非定型的乳房切除術施行。 骨シンチにて骨転移を認む。腫瘍マーカー値が下がらないため、04.07(骨転移巣の)助骨切除、これを利用してワクチン作製。同年10~11月ワクチン投与。その後、腫瘍マーカー CA15-3が一過性に上昇。05.03骨シンチにて取り込み像あり、MRIにて頚椎転移確認。同年3月頚椎に対して放射線治療。同年9月現在、腫瘍マーカーは正常化。ホルモン剤、抗がん剤フルツロンを低用量で併用。

〔症例0247〕 (尾道総合病院)
1999年手術、化学療法6クール後6年経過するも再発、脳転移と判明、05.09自家がんワクチン+全脳照射を同時併用。追加化学療法を拒否。退院後ホルモン療法のみで経過観察するもCA15-3上昇、12月骨盤転移による激しい痛みにより歩行不能となったため、仙尾骨照射。06.01緩和ケア病棟(ホスピス)に入院、4ヶ月後緩和ケア病棟(ホスピス)から自力歩行により退院、主治医・看護師・放射線技師を驚愕させた。06.09骨転移巣一部縮小(MR)、大部分は長期不変(SD)、12月現在通常生活中。

〔症例0258〕 (尾道総合病院)
1999年手術、骨転移・肺転移あり、放射線・化学療法(ハーセプチン5クール含む)。05.02肝転移、肺転移、骨転移発見、9月意識障害、脳転移も判明、多発性のためγナイフ不可能。今回は化学療法を拒否したため、9月 自家がんワクチン+アロマシン+全脳照射を同時併用。腫瘍マーカーCA15-3激減。患者は05.10退院。

〔症例0300〕 (尾道総合病院)
骨転移があるものの、自家がんワクチン接種(2005.12)後、2年経過時、少しのCEA上昇のみで生存。

〔症例0336〕 (尾道総合病院)
肝転移があるものの、自家がんワクチン接種(2006.05)後、1年半経過時問題なく、生存。

〔症例0406〕 (尾道総合病院)
胸部に大型骨転移があった。自家がんワクチン接種(2006.08)後、放射線・化学療法を併用、1年後には縮小、さらに3年後(2010.12)には骨転移が消失、全く再発の傾向なく、2012.01現在、健在。

注:通常、乳がんで骨転移があった場合、放射線・化学療法で完全寛解に至ることはない。8051症例もの検討の結果、強力な放射線照射をしても、骨転移の痛みを取るためには80%以上で有効だが、骨転移巣を完治させることはできないことが判明している(Falkmer U, et al. Acta Oncol. 2003; 42:620-33.)。上記症例では、自家がんワクチンの上乗せ治療効果があったためと結論されている。

〔症例0554〕 (尾道総合病院)
 65歳、2006年6月手術。スキルス型乳がん、術後に補助化学療法(CMF)、ホルモン療法、放射線療法、自家がんワクチン療法を施行。2009年12月、胸骨傍リンパ節に再発、放射線+化学療法(TS-1+PTX)を追加、2010年2月、再発リンパ節は完全消失していた。
 【主治医による考察】本症例は術後自家がんワクチン療法を施行したことで、リンパ節再発に対する放射線作用が増強し完全寛解を得たものと考えられる。
 学会発表抄録は → こちらです

〔症例0886〕 (竹越内科クリニック)
 2000年手術、当時リンパ節転移あり、放射線治療併用。9年後の09年2月局所再発。腕に浮腫あり、肺に米粒大の2-3個転移、骨髄転移あり(やはり乳がんでは、10年無再発でないと安心できない、との主治医見解だった)。09年2月自家がんワクチン接種開始、1コース接種終了時には腋の下の転移巣から出ていた体液が止まったという。免疫反応テスト-2は擬陽性。2010年7月、本人より「調子がいい、元気だ」との連絡あり。